建築儀礼

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家屋建築の節目ごとの儀礼が建築儀礼で、地鎮祭から始まる。地鎮祭はジマツリと呼ばれ、建物を建てようとする土地の中心に杭を打って葉つきの細い竹を一本くくりつけ、それにシメ(幣束)を下げて神酒・塩・魚・野菜等を供えた。四方に竹を立てて注連縄を張るのは、市域では比較的新しい方式のようである。また、神主の出席は昭和三十年代以降のようで、それ以前は施主と建築関係者のほかは、クミアイと親戚の人だけだったという。式は施主が建築関係者とともに進め、最後に神酒を飲みあい、四方に塩を撒いた。
 ジマツリのあとすぐにジギョウといって地ならしをし、整地がすむと土台石を据える位置を定め、そこに杭を打ってドウヅキに備えた。これらは男の仕事である。順序としては、つづいて柱の立つ位置の土地を打ち固め(これをドウヅキという)、そこに石ズエといって土台石を据えた。ドウヅキには二日間ほど要し、クミアイの人が中心になって行い、これには女性も参加した。ドウヅキは歌で調子をとりながら、力を合わせて行われた。
 柱が立て始められ、いよいよ棟木が上がるとムネアゲ(棟上げ)という祝いをする。棟木が上がるのは、屋根ノジという屋根下地のタルキが入ってから行うもので、まだ骨組が固まっただけのような状態の時である。ムネアゲの式は大黒柱の上部と棟との間あたりに板をわたして行われるが、ヘイグシ(頭部を兜形にした三・五寸角ほどの材)や幣束が立てられて神酒・塩・米・水・魚・野菜等々が供えられ、施主・大工・親戚などが参加する。その時、屋根の上から餅撒きをすることもあった。ムネアゲの式のあと、クミアイや親戚の人も加わって棟上げを終えた家の中で祝宴がある。

写真4-68 棟上げ

 家が完成し、家財道具が運び入れられて生活が始まると、新築祝いをした。このときには、施主、建築関係者が中心になり、クミアイや親戚の人が招かれた。新築祝いのあと、仕事の忙しくない適当な時期をみはからって、講中の人々によってイエミネンブツ(家見念仏)が行われた。