多摩ニュータウン内には、東京都や住宅・都市整備公団、東京都住宅供給公社等によって建てられた多くの中高層の集合住宅や、タウンハウス(共有庭および専用庭付低層連続住宅)がある。建物付宅地分譲もされたし、単に宅地分譲がなされそこに一戸建住宅が建築されたりもした。このように、建物全体の規模もさまざまであるうえ、同じ種類の中高層の集合住宅であっても、各世帯の専有する空間の広さや間取りが同じものばかりにならないように工夫されている。農家建築ではなく、勤め人を念頭において作られているため、建物自体が市域にそれまであった伝統民家とは全く様相を異にしているうえ、住まい方にも断絶がある。したがって、これらをいちように説明することはとてもできない。
ただ、伝統民家と比較した場合の、ニュータウン内の新しい家にほぼ共通する特徴をいくつか挙げるとすれば、まず第一に、集合住宅・一戸建住宅の区別なく、日常生活上の利便を最大目的にしていることがある。祝儀・不祝儀の際の使用がほとんど念頭に置かれていないわけである。そのかわり、一定範域内には共同の集会所が設けられ、必要とあれば祝儀・不祝儀にもここが利用できるよう配慮されている。第二には、平面積が伝統民家よりはるかに狭いにもかかわらず、内部が壁で仕切られて個室化がはかられており、また狭いわりには収納スペースがそれなりに確保されている。収納スペースとも関連するが、第三には、付属屋がほとんどないことである。中高層住宅などに一戸ごとに付属屋が設けられていないのは当然としても、一戸建住宅にも小さな物置がある程度で、風呂や便所はすべて主屋部分に組み込まれている。ただ、車社会を反映して、一戸建住宅にはガレージという現代の付属屋が備えられ、中高層住宅などにも、棟の近くにガレージが共同で設けられるようになった。