多摩市域の祭礼を含めた神社行事の中で、昭和五十年ころを境に、それまで停滞していた神輿の渡御が復活したり、新たに神輿渡御を始めた神社が数多くみられる。これは、昭和四十年代後半より都心で流行となった神輿担ぎの影響を、その理由の一つに上げられる。いま一つは、当市内ではニュータウン建設に伴う地域の区画整理事業が一段落する中で、社殿の遷座や社地の整地が完了し、それに合わせた記念事業として神輿の新調や修理が施されたことが契機になったものと思われる。神輿を担ぐには多数の人手が必要となる。氏子中の青壮年が氏子神輿会を結成し、近隣の氏子神輿会や神輿愛好会と交流することで、担ぎ手の不足を補う仕組みとなっている。
氏子会や氏子神輿会が地元に成立し、活動的な青壮年の集団が氏子の中に出現したことで、新たな神社行事として定着しつつあるものとして、新年の初参り行事がある。これは多摩市のほとんどの鎮守神社で昭和六十年ころより始められた行事で、新年と同時に神社に参拝する人に対して、境内で暖を取る焚火を燃やし、甘酒を振舞うというものである。神社によっては、縁起物の破魔矢や神札・お守りを出し、参拝者に初打ちと称して大太鼓を打たせるところもある。