第四節 屋敷神と屋内の神

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 屋敷地の一部、または付属地の山林などで、屋敷の守護神として祀られる神を屋敷神という。多摩市内の屋敷神の状況については、市内に古くから居住する旧家とその分家の七割以上に当る約六五〇戸に対してアンケート紙を郵送し、その傾向の把握を試みた。アンケートの有効回答は二七〇件でその内、一六六件(延べ一九七例)が単独あるいは複数の屋敷神の祠を祀る、というものであった(九件の中断廃止を含む)。屋敷神の祭神・祠で、最も多かったのは稲荷社で一六二例となっている。その他は山の神、弁財天など一五種三二例となっている。
 ところで、多摩市はニュータウン建設にともない類稀なる区画整理を経験した。こうした生活環境の激変の中で、稲荷社については祀りの継続中断の有無を尋ねたところ、区画整理による中断が二例、宗旨替えが二例、転居が一例、不明が四例で、ほとんど影響を受けていないことが判明した。これは後述するように、地守りの性格を強く持つ稲荷社に関してのことで、すべての祭神に適用することは無理があるかも知れないが、おしなべて旧来からの個人の家の管轄に属する屋敷神祭祀の継続性の強さを確認できた、と考えている。