屋敷稲荷の祭日についてみると大部分が二月初午で、この日五色の紙の幟や布にかかれた旗を出し、ワラヅトに赤飯を盛り、尾頭付の鰯と油揚げをお供えとする。稲荷を祀らない近所の家からの幟の奉納や油揚げのお供えなどを受ける家もあった。初午の日のタブーを尋ねてみると、朝一〇時まではお茶を飲まない。飲むと馬が暴れる(乞田)。同じく一〇時まで飲まない理由は、火の廻りが早いためである(一ノ宮)。理由ははっきりしないが一日中茶を飲まない(東寺方)というものが確認できた。
屋敷稲荷の神体は、幣束または狐の神像という回答が多い。その一方、理由については不明であるが、玉石であるというものがほぼ三分の一の五二例となっている。
次に、屋敷稲荷の呼称についてみると正一位稲荷大明神が多いが、固有名詞を持つ社も数多い。市域の、報告された正一位稲荷大明神以外の固有名詞の稲荷社名を列記しておく。
多摩市域で確認できた正一稲荷大明神以外の稲荷社名
穴守稲荷(三例)、家守稲荷、飯成五社明神、瓜生稲荷、小形稲荷、笠間稲荷、瘡守稲荷、鴎稲荷、川端稲荷、久保稲荷、地守稲荷(四例)、鈴木稲荷、鈴㟁嵯峨山稲荷、正宦稲荷、白笹稲荷(二例)、清光稲荷、妻恋稲荷、遠堀稲荷、豊川稲荷(三例)、中山稲荷、福次郎稲荷、伏見稲荷、宝天稲荷、妙法稲荷、箭弓稲荷 |
写真5-58 屋敷稲荷
写真5-59 水神様
写真5-60 霊神様
写真5-61 大六天と稲荷