大晦日の夜に厄神の宿をする家もある。一ノ宮地区のある家では、座敷に半紙を敷いた台を出し、オスワリと燈明を供える。燈明は、大根を輪切りに蝋燭(ろうそく)を立てたものである。これは厄神へのお供えであって、「厄神様は一夜の宿」といい一晩だけおまつりするものだという。供えたもののうち、大根は元旦のまだ暗いうちに川へ流し、オスワリは「乞食にやれ、自分のところでは食べるな」という。
写真6-9 一ノ宮地区の厄神の膳
写真6-10 厄神の膳への切り火
また、和田地区のある家では、桟俵(さんだわら)に幣束を立てたものをヤクジンサマとして床の間に祀る。大晦日の夜、当主が盆に燈明、塩、蕎麦などの供物をのせ、切り火を切って、床の間の厄神へ供えた。厄神への供え物は、年が明けると同時に下げた。
写真6-11 和田地区の厄神の膳