五月五日は端午(たんご)の節供であり、男の子のお祝いの日だといった。初めて男児が生まれた家では初節供を祝った。初節供の家へは、嫁の実家からは外幟、親戚からは金太郎の人形が届けられた。外幟は、昭和十年ころまでは、鍾馗(しょうき)様の絵が描かれてある絵幟であり、次第に鯉幟になった。鯉幟も、以前は、矢車はついておらず、竹棹の上には杉の葉を刺していた。幟は、四月の半ばころに立てた。
五日は、柏餅を作った。柏の葉は、太陽暦の五月五日ではまだ若葉であって間に合わず、店から買うことが多かった。初節供のお返しに柏餅とカサゴの干物を配った。カサゴの干物は三枚、または五枚つけた。嫁の実家、親戚、手伝ってくれた近所の家に配った。
また、茅、蓬、菖蒲(しょうぶ)を束にして、主屋の軒三か所に挿した。家によっては二か所であった。この日、家の回りに麦コガシをまくと長虫除けになるといった。長虫とは蛇のことをいう。
この日の夜は、菖蒲湯に入った。