盆棚は、樽の上に板をのせたものを土台にした。文机では低すぎるので、樽を使う家が多かったようである。上にのせる板は、うどんをうつときののし板とか蚕の上蔟(じょうぞく)に使うエビラなどを用いた。ここに、盆呉蓙(ぼんござ)を敷く。盆茣蓙は必ず新しいものを買って敷いた。盆が近づくと、荒物屋などで盆茣蓙を売ったという。この茣蓙は、盆が過ぎるとふだんにおろして使った。
図6-7 盆茣蓙のかけ方
この台の四隅には、笹竹を立てる。笹竹はニイコとよばれる今年竹である。笹竹と笹竹を茅の縄か竹でつないだ。この縄には、後や両脇には十三仏などの掛け軸をかけ、手前には、ほうづき、青柿、いが栗などを吊す。
盆棚の上には、先祖の位牌(いはい)、線香、蝋燭(ろうそく)、鉦(かね)などを仏壇から出して並べ、そこに、茄子と胡瓜で馬を作って置く。茄子の馬は、茄子に苧殻(おがら)を短く切ったものを四本刺して馬に見立てたものをいう。胡瓜(きゅうり)も同様に作った。家によっては、茄子にとうもろこしのヒゲを尻尾のようにつけることもあった。十三日の夕食のうどんを茹でるときに茹でる前のうどんを鞍として背中に乗せた家もある。
茄子の馬の横には、里芋の葉、または蓮の葉に賽の目に切った茄子をのせたものを置く。これは馬の飼葉(かいば)だという。また、ミソハギを束ね半紙を巻き、水を入れた皿の上に置く。お参りにきた人は線香を上げる前に、まず、ミソハギに皿の水をつけ、賽の目に切った茄子の上に降りかけた。
写真6-23 茄子の馬と飼葉
そのほか、花立てには、家の回りから取ってきた百合や萩などの花を飾り、畑から取ってきた西瓜、南瓜、とうもろこし、胡瓜、茄子などの野菜を供えた。西瓜や南瓜などは、時期的にまだ少し早いので初物になることが多い。
写真6-24 盆棚
図6-8 盆棚の説明
①十三仏の掛け軸
②西瓜
③さつま芋
④里芋
⑤茄子
⑥胡瓜
⑦南瓜
⑧とうもろこし
⑨中元
⑩位牌
⑪燈明
⑫ぼた餅
⑬線香
⑭塔婆
⑮盆花
⑯茄子の馬
⑰飼葉(茄子を刻んだ物)
⑱里芋の葉
⑲ミソハギ