イノコ

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本来は旧暦十月の亥の日の行事であるが、多摩市域では、新暦十月九日に行われた。この夜、蛙が冬眠するために、イノコ(亥の子)のぼた餅を背負って畑のそばを通る。すると大根が「どうれ」と首を持ち上げてくる、こうして大根が育つのだと伝えられている。
 この日、イノコのぼた餅といってぼた餅を作って神仏に供えた。新暦の十月九日は、新米を間に合わせるのがたいへんだったという。この日は春に田に降りてきた神様が帰る日だといわれている。落合地区中組では、昭和十五年あたりまで、イノコ念仏といって念仏をしていた。
 『多摩町誌』によると、イノコはトウカンヤともいったといい、子どもたちが一メートルあまりの新藁で棒を作り、「亥の子ぼた餅トウカンヤ」と囃しながら地面を打ってモグラ追いをした所もあったという。しかし、トウカンヤの呼称やモグラ追いの行事については現在ではまったく聞くことはできない。