十二月八日と二月八日をヨウカゾウという。オコトハジメ(『多摩町誌』)とかオコトジマイ(一ノ宮地区)などという家もあった。ヨウカゾウの晩には一つ目小僧が来るといわれている。各家では、一つ目小僧が家に入ってこないように、家の入口にメカイ、または篩(ふるい)をかけた。南野では、メカイを吊るした竹竿を入口に立てかけた。メカイは、竹で作った籠であって、籠の目がたくさんあることから、一つ目小僧が驚いて逃げるのだという。また、山からグミの木を切ってきて、囲炉裏にくべた。グミの生木は、燃えるときに悪臭を出すので、一つ目小僧がこの臭いを嫌がって入ってこないのだという。この日は、履物をみな家の中にしまっておく。履物を外に出しておくと、一つ目小僧に判を押されてしまう。判を押されると悪い病気にかかってしまうという。
写真6-29 玄関に掛けられたヨウカゾウのメカイ
また、十二月と二月の二回ヨウカゾウがあることについて、次のような話が伝えられている。十二月八日に村にやってきた一つ目小僧は、疫病など悪いことをもたらすべき家を決めて帳面につけ、村の辻にあるセーノカミに預け、翌年の二月八日に取りにくることを約束して帰っていく。しかし、セーノカミは一月十四日の晩、一つ目小僧から預かった帳面を燃やしてしまう。それで二月八日に一つ目小僧が取りにきたときに「一月十四日に大火事にあい、帳面を焼いてしまった」と答え、一つ目小僧はしかたなく帰ってしまう。だから、一月十四日の夜には、セーノカミのところでお焚き上げをするのだという。