行事の復活

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しかし、衰退する行事がある一方で、復活した行事もみられる。その一つがドンド焼きである。ドンド焼きは、かつては、講中を中心に行われていた一月十四日のセーノカミの行事である。子どもたちが、正月飾りを集めて小屋を作ったりしたことは、第二節で記述した通りであるが、このようなセーノカミは戦争がはげしくなったころから姿を消し、戦後はやめてしまった講中が多かった。しかし、次第に復活させる地域が増え、現在は自治会や地区委員会などが主催して行われている。セーノカミの呼称はなくなったわけではないが、自治会のお知らせや広報などではドンド焼きと記されている。
 たとえば平成三年一月八日発行の「多摩のこども」(多摩市青少年協議会発行)には「今年もドンと どんど焼き」の見出しで、地区委員会が主催、共催するドンド焼きが紹介されている。これらは、小学校の校庭で祝日である十五日の日中に行うものであって、昔のあそびと称して羽根つきやこま回しをしたり、年によってはキックベースボール大会をするなど以前のセーノカミとは趣の違う行事になっている。

写真6-30 小学校校庭での現代のドンド焼き

 和田の地区委員会主催のドンド焼きは、「健全な青少年の育成」を目的とし、「家族の日手作り教室 お正月の遊び」という行事の午後の部に組み込まれている。ドンド焼きは昭和六十年ころからであって、それ以前は、餅つき大会であったという。餅つきからドンド焼きへの転換は、餅の仕込みに手間がかかることやドンド焼きの方が派手で人が集まりやすいことなどが理由にあげられる。
 ドンド焼きのほか、前述の秋の祭礼も、地域によっては戦後一時衰退していたものが、近年になって復興したところもある。また、戦前にはなかった囃子や子ども神輿が新たに加わった地域もある。
 このような行事は、多摩市の都市開発がすすみ、人口が急増する中で、伝統を継承しながらも新しく多摩市に移り住むようになった人たちも参加できるような形を整えてきた。
 また、四月八日の花祭りでは、家庭で草餅を作る習慣は薄れてしまったが、仏教系の幼稚園では、月遅れの五月八日に園の行事として花祭りが取り入れられている。
 初午は、講中の稲荷や屋敷神に稲荷を祀っている家を中心に行われてきたが、近年になって新しく始めたところもある。多摩センターに開業したデパートでは、屋上に稲荷を勧請し、初午の近辺の日に初午祭を行っている。その日はデパートの近辺に五色の旗が立てられ、屋上で式典が行われる。

写真6-31 デパート屋上の稲荷祠の初午


写真6-32 初午祭の看板