近年になって新しく生まれた行事もある。家族の誕生日を祝う習慣やクリスマスなどは、新しい年中行事として家庭に定着しているといえよう。また、バレンタインデーのチョコレートの贈答も職場や学校を中心に生活の中に入りこんできた。
地域社会で、新しく始まったものがある。「○○祭」と称して、商店街が行う大売出し、公民館や団地などで行われる行事も祭と名づけられてはいるが、信仰を背景としたものではない。
また、盆踊りも近年になってから始まった行事である。たとえば落合地区では盆踊りはなかったが、昭和四十五年に老人会が主催する盆踊りが始まった。それが、昭和五十七年に自治会が共催として加わり、昭和五十九年ころから自治会主催の盆踊り大会になった。時期は盆の前後の都合のよい日であったが、最近は八月の前半の土、日曜日になった。
初期には、田畑や空き地で行われていたが、次第に参加者が増え、多摩センターの公団用地であるおまつり広場やビル建設予定地などを借りるようになった。しかし、多摩センター駅前が整備されるにつれ、空き地がなくなり、平成四年からは多摩センター駅南口のパルテノン大通りで行っている。また、名称も平成四年から夏祭盆踊り大会とし、より幅の広い行事をめざしている。主催者も、当初の老人会から自治会へ、さらに多摩センター商店会が加わり、現在では一八団体からなる多摩センター連絡会も協力している。
落合地区にはかつては盆踊りの習慣はなかった。そのため踊りの曲は、当初から東京音頭や炭坑節のようなよく知られた民謡のレコードをかけた。そのときの流行や参加者の希望などによって曲目を決めているという。落合の地域性がうかがえる曲としては、昭和五十八、九年に作った落合白山(はくさん)音頭がある。これは、石川県白山に伝わる白山音頭に落合の横倉鋭之助氏が落合にちなんだ歌詞をつけたものである。また、サンリオピューロランドが開設したころからキャラクターの歌であるポコポン音頭も踊るようになった。
これらの曲目は、すべてテープで流すため、歌い手はいないが、山王下(さんのうした)の瘡守(かさもり)稲荷社など落合にある神社から太鼓を借り、太鼓だけは叩くようにしている。
落合地区の夏祭盆踊大会以外でも、近年になって盆踊りを行う地域は多い。日時は七月末、八月前半の土曜日、日曜日が多く、盆の時期をさけるようになっている。
盆踊りは、もともとは祖先の霊をなぐさめるためのものとされているが、近年に行われるようになった多摩市域の盆踊りは、地域のイベントであって、盆の時期をはずし、八月十五日よりも早く行われるのが通例になっている。
このような新しい行事、前述の復活した行事は、年中行事の中の信仰的性格を落としたり減らしたりして、講中や氏子といった範囲を越えて参加者を求めるという方法をとっている。