明治四十一年二月二日の「内祝儀諸入費控」という記録から紹介してみる。鯣一五枚 一〇銭、麻 一〇銭、扇子一対と板昆布四枚で八銭、蛸(たこ)足二つと蛤(はまぐり)一升で三〇銭、多摩川で採れたハヤ二六銭、口取り一四人で一人一五銭ずつで二円一〇銭、葱(ねぎ)二本と蓮(はす)一本で三二銭、生魚三〇匹で二〇銭、寿の袋一〇枚と水引一〇で三銭、麹(こうじ)一升で二〇銭。
これで、ご祝儀の席には、吸い物、蛤一つ、餅吸い物一つ、魚一つ、牛蒡(ごぼう)一つ、口取りもの 葱のぬた、酢蛸、生魚一つが並んだようである。
明治期の記録には、「樽代」「樽料」「家内喜樽料」「里帰り」「袴代」「袴料」「結納帯料」「継目行」などの言葉が散見される。
さて、儀礼時の贈答では、誕生の祝いは、白米や鰹節などの食物と衣類が贈られている。衣食といった生存の基本にかかわるものが、祝いの品となっている。節供などになると、どちらかというと贈る側(祝う側)の意味合いが強まるのか、鯉幟や雛人形の大きさなどが注目されている。
お返しについては、明治四十四年のB家の記録を見ると、ミツメにぼた餅、蕎麦、赤飯、節供には柏餅と赤飯と蕎麦、シンキャク(新客)では金銭と半紙、鯣、鰹節、砂糖、菓子が用いられている。食物が中心となっている。