妊娠してから五か月目の戌の日に、犬のお産のように出産が軽くすむようにと、産婦は腹帯を締める。この帯のことをイワタオビ(岩田帯)という。嫁の実家で用意した晒(さらし)をこの腹帯とする。たいていの家では白い帯であるが、家によっては紅白の帯を用いる家もある。八王子市大塚のお手の観音(清鏡寺(せいきょうじ))の武相三十三観音の卯歳(うどし)開扉の際の、お手綱の元の方に結んだ晒をいただいてきて、それを安産のために腹に巻いたという。
嫁方の両親・両仲人に話があれば、嫁方の実家からは紅白の生地、麻、鰹節(かつおぶし)などを持って行き、両仲人立会の上で帯祝いを行う。嫁は七尺五寸三分に切った布を腹に巻き、正面に寿の印を押した。産婆さんが出産にかかわる以前は、仲人に巻いてもらった。帯を用意するのは嫁方の仲人、腹帯を巻くのは婿方の仲人であった。出産に産婆さんを頼むようになってからはたいてい産婆さんに腹帯を巻いてもらった。