1 青年の生活と結婚

572 ~ 572
 この時期は、肉体的にも精神的にも充実し、社会的にも認められて地域社会の成員として活躍する時期である。
 男女が出会う機会は、粉屋踊りの練習などの芸能の場、副業として盛んに行われていたメカゴ細工などの労働の場、あるいは夜遊びといわれた半ば公認された遊びの場などである。そして、結婚に至るにはハシカケやナコウドといった地域に深くかかわっている人の関与が大きい。特にナコウドは、新しい家族のオヤブンとして後々まで世話をしていく立場にある。
 嫁入りでは嫁が勝手口から入り、ヘヤ(ナンド)でアイサカズキやオヤコノサカズキ、キョウダイサカズキなどの儀礼が行われた。このことは、家との関係、つまり家の神との関係をもちつつ結婚式が行われていたことを示している。今日、住居とは別の場である結婚式場など、その家とはなんらかかわりのない神仏の前で挙式を行うのは、単に会場が移ったということのみではなく、自らが居住する家の神々との別離を意味している。いわば住居としての家への心もちの変化ばかりでなく、家族観の変化でもある。