アシイレ

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新年には、正月を迎えて新しい年になるという考え方と、節分を過ぎてから初めて新しい年になるとの二つの考え方があるが、婚姻の場合には、節分を契機としての新年が重んじられた。そこで厄年・年回りなどの如何によっては、節分以前にアシイレを行うことをした。これは一定の期間、嫁は婿方の家に寝泊まりすることで婚姻関係を成立させ、厄年・年回りの問題を解消しようとするものであった。
 また、結婚の話があってから三か月目に結婚する場合、三月がけになるのを嫌い、結婚前に嫁を婿の家で一泊させることがあった。二日から三日間泊まったり、たびたび泊まる場合もあった。それは、農繁期において仕事を手伝わせるという側面や、早く婿方の家風になじむよう、または嫁としての資格の適否選考の意味を持った場合もあった。嫁側に家を継ぐ男性がなく、娘がいる場合に、婿養子を迎えることがあった。次男以下のものが行く場合が多かった。
 世帯を持った農家の長男などが若くして亡くなると、その弟が長男の嫁と結婚する場合があった。これをナオルという。長男の戦死による場合が多かった。