ヒロメ

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披露宴のことをゴシュウギというところもあるが、広くはヒロメという言葉を使用した。座敷には正面には両仲人の男性が座り、表側には男、内側には女の客が席順に従って座り、両側中央より少し上座の表側に婿、その内側に嫁が向かい合って座る。嫁の左右には両仲人の夫人が座り、嫁の面倒を見るのである。下方中央に二人のオショウバンが座し、そのオショウバンの司会により祝の宴が進行するのである。

図7-2 ヒロメの席順の一例


写真7-24 結婚の披露宴(昭和31年)

 このオショウバンは、酒宴を取りしきる者で、クミアイのうちの芸達者な男性が努めた。オショウバンのやりようによって酒宴の内容が左右され、料理の出る手順なども悪いとオショウバンの責任とされた。
 まず、クミアイのオンナシ(女衆)によって桜湯が出される。そして、仲人から席上の人たちの紹介が行われる。次に冷酒が、雄蝶と雌蝶によって注がれる。三献が正式らしいが、今は略して一献とし、オショウバンからはじまって左右同時に順次杯が回され、最上の仲人のところで杯を交わらせてめでたく結び、床の間などに杯は置かれる。次いで燗酒にかわり吸い物、酢の物、口取りその他のご馳走が出て、いよいよ披露宴にうつる。料理には鯛がつきもので、口取りには鯛、蛤、きんとん、伊達巻、魚の摺り身で作るヨセモノ、ごぼう、その他縁起物として鶴や亀をかたどった米の粉で作ったヨセモノ、末広がりの蒲鉾、先が見えるようにと蓮の切り込みなどが入っていた。
 最初に出る吸い物は餅を主としたもので、吸い物の出る度に(三回ぐらいが普通)、嫁は色直しといって着物を着替える。こうして、飲めや歌えやの祝の宴が夜どうし続き、終わり近くになって酢の物が出る。酢の物は祝いの宴の終わりを告げるようなもので、ブッツアリボタモチが各人に出たり、嫁にはオタカモリといって椀に高盛りした飯が出て客人には蕎麦が出る。オタカモリは翌日握り飯にして焼いて嫁と婿とが食べる。最後に嫁のお茶といって、嫁が仲人の婦人につき添われてお茶を出して式はお開きとなる。