湯灌

584 ~ 585
湯灌(ゆかん)の湯は、平素用いている竃で沸かす。しかし、ある地区では、わざわざ木の丸太一本と竹二本を用いてみつまたを作り、それに鍋を吊って湯を沸かす。竹と木を合わせ用いるところから、木と竹の箸を片方ずつ合わせて一膳とすることを忌む。
 湯の準備ができると、次は湯灌を行う。まず、冷酒と包丁を入れない豆腐で自分たちの身を清め、晒でたすきや褌(ふんどし)をして身じたくを整え、たらいに水を入れ、次に湯を注いで湯加減を見る。水に湯を注ぐのでさかさ水といい、このために普段はこれを忌み嫌う。湯灌中は線香を焚き続ける。死者の男性は髭を剃り、女性には髪を整え薄化粧をさせた。枕団子を作ったときの湯を入れるところもある。
 湯灌の湯は不浄のために、産湯と同じような場所に捨てる。つまり、日の当たらないところ、縁の下、方角の良い方、あるいは畳を上げ床をはがして捨てるなど、日の当たらないところへ捨てるのは共通している。