納棺

585 ~ 585
棺桶は、桶から座棺になり寝棺となった。かつては、棺はクミアイの人が材料を買って来て組み立てた。近年は葬儀店が準備する。棺に死者を入れるのは近親者で、白装束を着せてから棺に入れる。頭陀袋(ずたぶくろ)、桑の木の杖、六文銭、生前死者が好んでいたものを入れる。
 白装束は嫁か身内のものが作る。クミアイのオンナシ(女衆)が作るところもある。晒一反を買って、鋏を使用せずに手で切り、麻糸で縫い、縫った後の結び目は作らない。信州の善光寺参りをしたものは帷子を買って持っているので、それを用いた。浴衣を着せる人もいた。着物を作った残りの布で手甲・脚半・足袋をつくる。足半(あしなか)はクミアイのオトコシ(男衆)が編む。これらを死者に着せる時には普段と反対に、すべては逆にする。着物は左合わせにする。
 納棺したらクミアイの人が、二丈四尺の晒を棺に巻いて、祭壇に置き、その上に金銀の紙で飾りつけをした天蓋を乗せて置く。祭壇の前には、枕団子、一膳飯、花などを死者の枕元に供え置く。棺に巻いた晒は、埋葬の時に穴掘りものが取って四等分にして分けて持ち帰った。この晒で褌をつくると魔よけになるという。