寅の日とか友引には、葬式は行わない。講中には葬式の日が告げられるから、その日は朝からその家に集まり、まず穴掘り番を決める。穴掘り帳などがあり、一番古い者から順番が決まっている。しかし、その番に当たった家でも、妻が妊娠している場合は次の家に代わってもらう。
穴掘りはメドバンともいい、葬式の午前中に棺を埋める穴を掘り、出棺、野辺おくり、埋葬の作業を行う。穴掘り以外の講中の者は、幡(ばん)を作ったり、竜(たつ)の口、造花、天蓋(てんがい)などを竹で作る。喪家の希望によっては竹箸もつくったりする。特に四十九日の団子を入れる篭を編むには、左前に編まなければならない。親類からは赤飯が届けられるが、取り込み中台所も忙しいので飯の準備も大変だろうということで、塩をふりかけさえすれば食べることができる赤飯が届くようになったとも考えられている。
穴掘りなかばに、豆腐を肴に冷酒が出る。これは残すものではない。無理にでも飲まなければならない。穴掘りも終わり、講中の者の準備が終われば出棺まで待ち、僧が来て、講中のものが作った大幡、小幡、天蓋幡にそれぞれ経文を書き、大幡は枝のついている竹四本へ結びつけ、小幡天蓋幡も大小の四隅に結びつけておく。
読経が終わると棺を座敷の中央に出し、遺族や縁者が最後のわかれを告げて蓋を閉じる。立会人はあらかじめ用意しておいた石で、めいめい釘を打ちつけ、棺の側面に晒しを巻き、用意してあった縄を数条にして棺の両端を固く結び、縄の両端は埋葬の際吊り下げられるほどの長さを残しておく。