安産祈願

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安産祈願に行った家庭と行かなかった家庭の割合は、行った家庭が四四パーセント、行かなかった家庭が五六パーセントで、安産祈願に行かなかった家庭の割合が多いのが特徴的である。このことは、現代における出産が医学的に確かに管理され、妊産婦に対する保健衛生の指導も行政的に行われ、安全に行われることが根底にある。しかし、いくら医学的に対応できても、個人の体質や、出産の年齢など、一〇〇パーセント不安のない出産であるわけではない。その不安をどのように解消するかは文化の問題であり、そこの伝統的な方法として安産祈願が行われる。
 表7-2に示したように、第一子から第二、第三と、順になるにしたがって、安産祈願に行かなかった家庭の割合が多くなるのは、出産と子育ての経験の有無から来たものであろう。
表7-2 〈質問〉安産の祈願にはどなたがおいでになりましたか
祈願に行った人 安産の祈願にだれが行ったか 誰かが行った家庭の合計 行かなかった家庭の合計
生まれる子 本人(妊婦) 本人の親 夫の親 その他
第一子 33 23 27 15 4 57 44
第二子 19 23 12 4 6 31 50
第三子 4 3 3 1 2 6 19
第四子 0 0 0 0 0 0 5
合計延べ数 56 49 42 20 12 94 118

 安産祈願は、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮や中央区の水天宮などの著名なところ、府中市の大国魂神社、調布市の布多天神、八王子市の清鏡寺観音堂境内の塩釜神社など、地域で伝統的に信仰されてきたところ、あるいは、実家や郷里付近の寺社などが祈願の対象とされている。