多摩市の昔話の概要

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昔話のうち、動物を主人公とする動物昔話や、人間の一生の物語である本格昔話などを市域では「お伽(とぎ)話」などとよぶこともある。笑話のことを「ひとつ話」「ひとくち話」「落とし話」とよぶこともあった。また、夜、寝るときに話を聞くところから昔話のことを「寝話」とよぶこともある。
 ひとつ話という言い方は、笑話ばかりではなく、何度も話される経験談などでも使われ、たとえば、戦争や災害で九死に一生を得た話や狐にばかされた話を「誰々さんがよくひとつ話にしていた」という。短くて落ちのある話は、ひとくち話とか落とし話といわれるが、これもひとつ話と同様で「ひとくち話にあんじゃねえかよ」といって始まる話が昔話とは限らない。また、このようなお伽話、ひとつ話、落とし話という呼称も、明らかにほかの話と区別して使われているわけではない。
 昔話の語り始めの文句は、「昔々あるところに」であり、語り終わりは「これでおしまい」「何々だったって(だったとさ)」「こんなふうに聞いている」などであり、それほどはっきりとは伝えられていない。語り口は、「昔々あるところにいいじいさんといいばあさんがあったとよ」というように始まり、「何々したぁとよ」というような文末でつないでいく語り方であったという。