昔、太陽の神様が地球を作ったときに、地球に住む動物たちが何を食べるかを一つ一つ決めたことがあった。順番に動物たちが神様に呼ばれ、最後にミミズが呼ばれた。神様はミミズに「お前は、他の者と違って土の中に住むことになったのだから、土を食べればよいだろう」と言った。欲の深いミミズは「はいわかりました。しかし、この土を全部食べてしまったらあとは何をいただけますか」と言った。太陽の神様はミミズの欲の深さにあきれ、お怒りになった。以後、ミミズは太陽の神様の前に出ることはできなくなり、もし、暑い日に地上にはい上がってくるとたちまち干からびて死んでしまうのだという。(要旨)
(関戸 井上正吉『多摩の民話』所収)
この話はミミズが土を食べるという説に基づいた動物由来譚で、欲張りを諌(いさ)める話になっている。前項の「烏と田螺」と同様、井上正吉氏の『多摩の民話』所収の話である。ここでは要約してあらすじだけを載せたが、『多摩の民話』の中では、田の話など井上氏の体験をまじえた導入になっている。また、ここではすべてを掲載できないが、井上氏の伝えている話には、ほかに、鶴、ふくろう、蜘蛛(くも)、蛙、むささび、もず、赤とんぼなどの動物の習性を語る動物由来がいくつもある。