〈姥捨て山〉

619 ~ 619
年寄りはきたないから六十歳過ぎるとオバ捨て山に持っていって投げ捨てるように殿様が命令をした。あるときに、子供がどうしても捨てるのがかわいそうだと思った。殿様のいうことに答えられれば捨てなくともいいという。「そんなに捨てるのがいやなら、灰で縄をなってこい」「同じ(太さの)棒のどちらがウラかモトかわかればいい」という。子供が困っていたらおばあさんが「じゃあ水を汲んでね、その棒を入れてみろ。根元の方が重いからこう沈む。ウラの方は軽いから」と教えてくれた。灰で縄をなってくのは(おじいさんが)「縄を燃やせばそのまんま残るから、それを持っていって見せろ」と教えてくれた。殿様が「だれに聞いた」というので「おじいさん(と、おばあさん)に聞いた」と答えたら、「ああそうか。それじゃあ」と許された。おじいさんやおばあさんはオバ捨て山に捨てないで、年寄りは大事にしなきゃいけない。ものをよく知っているのは年寄りだということをよく教わった。(要旨)

(南野 萩生田定一)

 この「姥捨て山」の昔話は、年寄りの知恵によって難題を解く型である。市域では、灰の縄をどのようにして作るかという部分だけは比較的よく知られている。