昔、仲のよい大根と人参と達磨(だるま)が連れだって銭湯に行った。大根も人参もきれい好きなので念入りに体を洗った。大根はますます色が白くなり、人参は長湯しすぎて赤くなってしまった。達磨は、たいして洗うでもなくぷかりぷかりと浮いていた。そして風呂から上がり、大根も人参も風呂代を払った。番台さんが「達磨さん、おあしを払ってくださいよ」と声をかけると「達磨におあしがあるものか」といって帰ってしまったという。(要約)
(関戸 井上正吉『多摩の民話』所収)
野菜の色の由来を語る笑い話である。一般には大根、人参、牛蒡の三者が風呂に入る話であるが、ここでは達磨が加わって「あしがない」を落ちにした笑い話になっている。