三本松でぐるぐる回る

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三本松のところで「うち行くだ」って言って一生懸命歩くが別の方向へ行ってしまう。それで、また別な人が「おめえ、どこ行くだ」と声をかけても「うち行くだ」と言って別の方向へ行ってしまう。どうしても「おらのうちはもこう(向こう)だ」と言ってきかなかったという。

(落合 男 大正生まれ)

 オシ沼のように、昔から狐がよく出る場所がいくつかあった。落合地区山王下(さんのうした)から由木(八王子市)へ行く台地上に三本松という所があり、名前の通り、三本の松が生えていた。同じ尾根上に、雑木林の中にボンゼエとよばれる三角形をした畑があり、畑の縁に沿って歩くと、いつまでもぐるぐると回ってしまう。さらに、近くには三角山もあった。まるで狐にばかされたようだったという。「三本松を夜遅く通ると、関戸の川原の方に狐火が見えた。そういうときには、足元に狐がいる」という話もあった。

図8-2 迷い道近辺の位置関係


写真8-3 三本松に通じる山道(昭和43年)

 また、落合の青年団の者が大勢で見た話もある。クラブとよばれていた集会所で「月が上がったから早くけえん(帰る)べえ」と帰ることになった。月が三本松の方に出ていた。三本松はクラブから見ると北になるのでそこには月が上がるはずはない。「三本松のお月さま」と、一人ではなく、驚いて大勢で騒いだ。四月三日の恒例の運動会の日のことだったという。
 狐のよく出る場所はそのほか、アカサカとよばれた赤土が露出した切り通し(落合)、木の茂ったこんもりとした山、土手のような昼間でも薄暗い場所が多かった。乞田川の大橋(貝取)にも狐がいるといわれていた。稲荷山(連光寺)のような稲荷を祀っている場所も狐が出ると恐れられていた。