狸やムジナ

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狐の火ではなく、狸やムジナの火といわれているものもあった。たとえば関戸地区の明治生まれの女性は、「麦を播(ま)くころは夜中の十二時まで働いた。十二時ころになると、こんな大きな太陽が上がる、西の方へ。ムジナが見せるんだといった。」と自分の体験を語っている。
 狐以外にも、火を見せるという動物がある。狸とムジナである。狐火がいくつもの火が点々と提灯のようにつくのに対し、狸やムジナの火は、月や太陽に見せるというものが多い。太陽や月が出るはずのない時間や場所(北の方角)に太陽や月を上げたり、月が出ているのに、もう一つ満月を上げたり、三つ、四つと月を上げたりして人を驚かすのだという。
 また、ムジナから声をかけられた話もある。
 自分の父が小学生のときの話である。遠足の日の朝、目が覚めると「おーい、おーい」と呼ぶ声が聞こえた。友人が呼んでいるのだろうと思い、急いで出かけると、途中の墓石にムジナが長々と寝ていたという。友人の家へ行ってみると、まだ起きたばかりで呼んではいないという。それはムジナだったらしい。(『わがふるさと』)

 ムジナの声は人間と同じ声だ(乞田)という。歩いていて、「おーい、おーい」と呼ばれたが、どうもムジナだったようだという話もある。