3 伝説

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 多摩市域にはさまざまな伝説が伝えられているが、多摩ニュータウンの開発により、その場所の景観がまったく変わってしまったところも多い。伝説は、同じ事物や場所についてもいくつかの伝承が伝えられていることもあり、ここでは出典を示しながら伝説を紹介する。
 水は暮らしにかかせないものである。川や沼には、カッパのように特別なものが住んでいると考えられており、水辺には水の神が祀られていることが多い。また、橋は人間の暮らすこの世と異界との境とも考えられている。市域でも、川や沼、井戸などに引き込まれた話がある。
 坂は、平地と山との境である。一般には、坂を越えるということは、自分たちの住む場所から異界へ踏み出すことというようにとらえられている。峠は、実際に村境になっていることが多い。市域は坂が多く、坂にまつわる話がいくつも伝えられている。
 瞽女(ごぜ)、比丘尼(びくに)や六部(ろくぶ)などの話は、いずれも手厚く葬った話になっており、旅の途中で亡くなった者への哀悼と恐れが表れている。
 多摩市域は古戦場も多く、小山田氏や北条氏の滅亡にかかわって伝えられている話もある。中には、これらの武将の話と武将にかかわらない話とふた通りの伝説が伝えられている場合もあり、伝説がそのときどきの人々の関心とともに生成していったあとがうかがえる。