祠堂・碑の伝説

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ムラにある地蔵や碑にはさまざまな伝説が伝えられている。いくつかをあげてみよう。
①縁切り地蔵 貝取地区の乞田川にかかる大橋のたもとの地蔵は縁切り地蔵といわれ、その前を嫁入り行列は通ってはいけないという。(『叢書5』)

写真8-10 縁切り地蔵(乞田地区)

②セキ宮 一ノ宮地区のセキ宮は、昔、多摩川の上流の青柳(国立市)から流れてきた神様であって、一ノ宮地区に引っかかっていたものだという。初めは堰(せき)の神として祀っていたのが、そのうちに咳神となり、百日咳に霊験あらたかだといい、重湯を竹筒に入れて供え、回復を祈願した。(『叢書5』)

写真8-11 セキ宮(一ノ宮地区)

③瞽女の碑 落合地区の三本松のそばに瞽女の碑があった。これは、ある講中で泊めてもらえなかった瞽女が亡くなった場所だという。その夏は疫病がはやったという。(『叢書5』)
④大六天 連光寺地区の馬引沢(まひきざわ)の大六天は蝶の彫り物がある。あるとき、馬を引いて通ろうとしたところ、馬が蝶を踏みつぶしてしまった。その夜、その人は高熱を出し、これは大六天のお使いの蝶を殺した祟りだろうということで、ここに祀ったのだという。(『叢書7』)
⑤六部の墓 連光寺地区馬引沢の六部の墓は、自分で掘った穴に入って、鉦を叩きながら成仏した旅の六部を葬った所だという。(『叢書7』)
⑥馬頭観音 貝取地区の馬頭観音は、餌を十分に与えられなかった馬が死んでしまったため、祟りを恐れて建立したものだという。(『叢書5』)
⑦秋葉神社 落合地区中組の稲荷神社の境内に秋葉神社が祀られている。これは、昔、三本松に住んでいた古狐を旅人が火の不始末によって焼き殺してしまい、その後、上落合に次々と火事が起きた。古狐の祟りだろうということになり、秋葉神社に代参をたて、火伏せの神として勧請したのだという。(『落合名所図会』)
⑧オシャモジ様 落合地区唐木田のオシャモジ様は、あるイッケの本家のおばあさんが、十二月一日のカワビタリのぼた餅を食べて喉につかえて死んでしまった供養に建てたものだという。以来、このイッケではカワビタリのぼた餅を食べない。オシャモジ様は、子どもの風邪の神様だという。(『叢書7』)

写真8-12 オシャモジ様の祀られている森(中央)