さまざまな禁忌

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「何々をするな」という禁忌は多い。特に妊娠中は禁忌が多かった。たとえば次のようなことがいわれていた。
妊婦は柿の木の下を通るな(柿は体を冷やすから)
鳥肉を食べるな(トリ目の子どもが生まれるから)
肉を食べるな(ミツ口の子どもが生まれるから)
火事を見るな(痣のある子どもが生まれるから)
死体に触るな(黒い痣のある子どもが生まれるから)
また、通常の生活の中でも禁忌は多い。爪、櫛(くし)、足袋など身体にかかわるものに次のようなものがある。
火のそばで爪を切るな
夜爪(よづめ)を切るな
出爪(でづめ)を切るな
櫛を投げるな、落ちている櫛を拾うな
足袋を履いて寝ると親の死に目に会えない

 夜とか出かけるときに爪を切ることはいけないという。「夜爪を切ると親の目に入る」「夜爪を切ると親の死に目に会えない」というように、禁忌を破った結果を示して「親の死に目に会えない」といい、戒めを強めている。囲炉裏の回りで爪を切ったり髪をとかしたりすると、火の中に入ってしまうことがある。火は神聖なものであるから、とくに囲炉裏の火は大切にしないといけないとされていた。
 櫛を投げることは投げ櫛といって、これは「縁が切れる」ことだという。落ちている櫛を拾うことは「苦」を拾うとして嫌われている。物の受け渡しについては、櫛でなくとも投げて渡すことはいけないこととされている。
 これらの禁忌の中には、葬送の習俗と同じことを日常で行うことを禁止しているものもある。
  さかさ水、さかさ干しをするな
  履物を履きおろすな
  履物で表から出るな
  ひと臼餅はつくものではない
  北枕で寝るな
などである。