鳥や虫の鳴き声を人間のことばにたとえていうことがある。調査でいくつか聞くことができたのでここに上げてみよう。
こおろぎは、「カタサセ スソサセ ケツノケバニ ダンゴサセ」と鳴くという。こおろぎが鳴く季節は、これから秋も深まって寒くなるころである。肩や裾の繕いをしなさいという意味だという。
ほかに、小綬鶏(こじゅけい)は「チョットコイ チョットコイ」と人を呼ぶように鳴く。ふくろうは「ゴロスケ ホウコウ ムダボウコウ」と鳴く。これは、奉公が無駄奉公だったという意味でさらに、「三年勤めて百とった」と続けて鳴くという。
ほととぎすは、一日に千八声(せんやこえ)鳴くという。また、「オット ノド ツッキッタ」と鳴くというが、これは、兄弟が食物で争い、弟が自分が食べていないことを証明するために、喉を掻(か)き切ったからだという。それで「弟が喉をつっ切った」と鳴く。
頬白(ほおじろ)は「テッペン イチロク ニシュ マケタ」と鳴く。頬白は博打(ばくち)が好きで、博打をしたが、二朱敗けてしまったという意味である。「テッペン イチロク」は、さいころの目のことである。
「ボウズ コイ ボウズ コイ」と鳴くのはみみずくであって、「坊主来い」と鳴くので、子どもは恐がった。話者の子どものころ、いつまでも泣いていると「ほら、ボウズコイが来るぞ」とおどかされたという。