丹次郎は「芸がうまく、最高の喉であった」といわれている。丹次郎によって伝えられた演目は次のようであった。括弧の人数は、演ずるための通常の人数である。
・三番叟(さんばそう) (一人)
・手踊り かっぽれ(三人から五人)
あいぼれ(「かっぽれ」を二人一組で踊るもの。偶数の人数)
伊勢音頭(三人から五人)
新川(三人から五人)
・踊りと所作 白桝粉屋(二人。四つ竹を持って踊る)
・段物 忠臣蔵五段目(七人から八人)
忠臣蔵三段目(二人)
みたどの和尚(細田の奴)(一人)
笠松山(二人)
ほかに、現在では経験者はいないが『中澤閑想記一』によると「義経千本桜」「越後小台寺」「三人奴(やっこ)」「安珍清姫」があったという。
祭礼などの舞台では、まず丹次郎が「口上」を述べ、次に「三番叟」が演じられた。「三番叟」のあとは、手踊りや段物が続く。幕間には、手のあいている者によって「ひとつとや」から始まる数え歌が歌われた。これらの演目にはすり鉦と三味線か大正琴の伴奏がついた。