落合で三番叟が演じられたのは、昭和十七年が最後であったが、平成八年六月に市史編さんの調査のために伝承者によって復元が試みられた(口絵参照)。三番叟を伝えているのは、昭和十七年の公演でも三番叟を務めた小泉勝一氏(大正九年生まれ)である。
三番叟の伴奏は、大正琴、笛、拍子木である。大正琴は古くは三味線であった。笛は、篠竹を五センチメートルほどに切ったものであり、音は一音のみで音程はとらない。三番叟の衣装は、赤い短めの着物に袴(はかま)をつけ、上に袖の長い上裳という着物を着る。袖口に紐がついており、常に指を紐に通しておく。
三番叟は、粉屋踊りに先立って舞台を清めるものであって、三番叟の始まる前に、舞台の中央にはサンボウ(三方)が置かれ、海の幸、山の幸が供えられた。
拍子木の音とともに舞台上手から右袖を掲げて三番叟が登場し、サンボウの前に両手をつき、舞台上をなめるように顔を動かして「おおさんや おおさんや この喜びあり 喜びあり この喜びはほかにはやらじと思う」と述べ、立ち上がり、拍子木の「イエイヤ」の囃子に合わせて、右袖を巻きながら拍子を踏む。次に「イエイヤ」の拍子に合わせて左袖を巻きながら拍子を踏み、さらに正面を向いたまま拍子を踏む。ここまでで一つの所作となる。次に舞台上手、上手の奥、下手の奥、下手の前と四方で同じ所作を繰り返し、舞台中央に戻り、決めの所作を行うと、拍子木の音とともに舞台の幕が引かれる。