多摩ニュータウンへの第一次入居開始が昭和四十六年であるから、集合住宅居住者同士のつきあいには、まだ両親以来というのはほとんどないかと思われる。また、居住者自身にも出入り変更が多く、かつての村落社会のように、長年にわたる同一メンバーの間で培われる慣習化したつきあいのパターンは顕著とはいえない。小中学生など未成年者は学校生活を通しての交友が多いが、成人同士の近所づきあいは男性と女性とで差がみられる。
成人男子の場合には、どうしても職場での生活時間が長いので、近所づきあいは希薄となる。ただ、家順で当たる自治会の役員をつとめたりすると、それを契機に人の輪が広がったり、役員をやめたあとも自治会の各種行事に参加したり趣味のサークルのメンバーとなるケースがみられ、一般に地域社会への関心が強くなるといえよう。
成人女子の場合には、勤めのあるなしにかかわらず、男子に比較して近所づきあいは密である。女子の場合、自治会の役員就任を契機として近所づきあいの始まることもあるが、それよりも子どもの幼稚園・小学校への入園・入学を機会に、他の母親とのつきあいの始まることの方が多いようである。勤めに出ていない女子の場合には、生協の日用品・食料の共同購入をしているケースが多くみられ、この関係でのつきあいも多い。また、物品のリサイクル運動など、地域社会のさまざまな活動に積極的に参加したりあるいはやむなく参加させられ、それを契機に、日常活動を離れて旅行や芝居見物を一緒にするというかたちで、つきあいが広まり深まっていくという。ただし、このようなつきあいがどこまで定着し伝承されていくかは、いまのところ明らかではない。
家としての交際は、同じ棟の階段を共有する同士でなされる。例えば自治会の回覧板を下の階から順次上に上げていく場合、前もって話合いをしておいて、若い家番号の居住者は読み終えたあと次の家のドアの把手に回覧板の紐を掛けていくというふうにしているケースが多い。不祝儀が生じたとき、もし手伝いを必要とする際には、この階段単位になされることは多くの棟で慣習化されているといえよう。