1 さまざまな祭り

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 多摩ニュータウンの土地区画整理事業区域内には、古くから住んでいる人々によって、旧来の村落で継承されてきた神社や小祠を中心とする伝統的な祭りがいくつも執行されている。しかし、このような神社や神とのかかわりを強く意識する祭りとは別に、ニュータウンの全区域において、ただ漠然と祭りだとしか意識されていない多くの行事がある。祭りの持つ祝祭的性格を強調した行事といえよう。
 いくつかの自治会では、自治会の行事としてクリスマス会や餅つき大会を行っている。また、桜祭りと称して四月の花見を恒例の行事としている例もあるし、秋の運動会や球技大会、さらには敬老会までも祭りの一つだとする考えもみられるようである。これらは、駅前の商店会などで客の購買意欲をかきたてるために祭りと銘うった大売出しを行う祭りとは異なり、地域住民みずからが、非日常的時間を演出することによって日常生活の活性化を目ざそうとするイベントで、実は伝統的な祭りや講行事もこのような性格を多分に持っているのである。この種のイベントは、神社や信仰的講を持たないニュータウンの新しい住民にとっては、欠かせない祭りだといえよう。
 擬似祭りとも称すべきこのようなイベントのうちで、ニュータウン内の多くの人々を結集させるのは、一月十四日もしくは十五日のドンド焼きと、七月下旬から八月にかけて行われる夏祭りである。
 ドンド焼きは、多摩ニュータウン開発以前からかつての村落社会に伝承されていた小正月の火祭りとしてのセーノカミの翻案である。セーノカミは、道祖神の祭りをかねて、子どもたちが各家から正月の注連飾りや暮の煤払いの竹などを集めてそれで小屋を作り、十四日に小屋に火をつけ燃え上がるのを見て囃したてる行事で、集まった人々はその火で小正月のツクリモノとしての団子を焼いて食べたのである。セーノカミに際しては、子どもたちが、道祖神への賽銭と称して金銭を貰いに各家を歩いたり、小屋の中で夜遊びしたり、燃やすときに卑猥な言葉を発したりしたので、学校教育の目の仇にされ、太平洋戦争後は中断していたところが多かった。しかしニュータウン開発以後、自治会の子供会の行事として相ついで復活した。のみならず、セーノカミの伝統を全く持たない地域、すなわち管理組合型自治会や団地自治会においても盛んに行われるようになったのである。しかし名称は新たなドンド焼きに変えられ、内容も公園や小学校校庭などで自治会の人々が世話をし子どもを集め、単に正月の注連飾りなどを燃やして賑やかに団子などを焼く行事になってしまった。すなわち子ども主体の道祖神祭りとしての面影は全くなくなっているわけで、かつてのセーノカミを換骨奪胎した新しい小正月の時期のイベントだということができよう。

写真9-14 落合団地のドンド焼き


写真9-15 小学校校庭で行われるドンド焼き

 夏祭りについては、次項にゆずる。