環境・植物

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 多摩ニュータウン開発の拠点であった多摩市の丘陵地風景は都市的景観に大きく変貌し、燃料革命をきっかけとした里山の社会的環境変化と相まって、多くの野草たちが消えていきました。しかし、関戸や和田、連光寺地区などには原風景的な植生が保全され、コナラやクヌギの雑木林には、多摩丘陵固有のタマノカンアオイをはじめ、フデリンドウやキンランなどといった里山の植物が今も健在です。また、市内には新たに整備された公園、原地形を活かした緑道や緑地が数多くあり、コバンソウやユウゲショウなど、多様な帰化植物が入り込んでいるなかにも、カントウタンポポやノアザミ、ホタルブクロといった郷土の野草が残存している場所も少なくありません。なお、河川低地の大部分も土地利用の形態が大きく変わりましたが、多摩川と大栗川合流点付近では河川敷から段丘崖の自然が広く残され、外来植物が広範囲に生育する環境下、河川特有の植物が今に命をつないでいます。(内野秀重)
一本杉公園のスダジイ(ブナ科) 2016(平成28)年7月

一本杉公園のスダジイ(ブナ科) 2016(平成28)年7月

[内野秀重氏撮影]

人々に守られてきたスダジイは、地域の歴史を見続けてきた大木。撮影地南野。


タマノカンアオイ(ウマノスズクサ科) 2017(平成29)年4月
フデリンドウ(リンドウ科) 2014(平成26)年4月

左:タマノカンアオイ(ウマノスズクサ科) 2017(平成29)年4月

[内野秀重氏撮影]

多摩丘陵を代表する貴重な固有種で、原地形の残る公園や緑地に残存する。撮影地永山。

右:フデリンドウ(リンドウ科) 2014(平成26)年4月

[内野秀重氏撮影]

春を彩る小さな越年草で、里山的な公園の路傍や疎林下などに点在する。撮影地唐木田。


ギンラン(ラン科) 2017(平成29)年5月

ギンラン(ラン科) 2017(平成29)年5月

[内野秀重氏撮影]

腐食層が安定した樹林下で菌類と共生し、街の公園や緑地でも見られる。撮影地永山。


ユウゲショウ(アカバナ科) 2016(平成28)年6月

ユウゲショウ(アカバナ科) 2016(平成28)年6月

[内野秀重氏撮影]

熱帯アメリカ原産で園芸種から野生化し、今や街の隅々で目にする春から夏の定番野草。撮影地南野。


ニシキソウ(トウダイグサ科) 2017(平成29)年9月

ニシキソウ(トウダイグサ科) 2017(平成29)年9月

[内野秀重氏撮影]

古い街並みの空地・路傍に生える一年草で、多摩市では低地を中心に分布。撮影地一ノ宮。


セイタカアワダチソウ(キク科) 2019(令和元)年11月

セイタカアワダチソウ(キク科) 2019(令和元)年11月

[内野秀重氏撮影]

かつては造成地に繁茂していた外来種だが、水辺や農地周辺に定着している。撮影地一ノ宮。