1930(昭和5)年、明治天皇の宮内大臣であった田中光顕(みつあき)らにより、明治天皇や皇族の連光寺行幸・行啓を記念して「多摩聖蹟記念館」が建てられました。この建物の設計者の関根要太郎は当時の日本の軍国主義的傾向の強い中、ヨーロッパの古代から近代までの多様な建築様式を取り入れた設計をしました。この建物は内部に設置された渡辺長男作「明治天皇騎馬像」とともに、時代に迎合しない近代芸術の歴史遺産です。(糸井孝雄)
明治天皇連光寺村御猟場
[『多摩の聖蹟』より]
1881(明治14)年2月20日の連光寺村向ノ岡でのウサギ狩りのルートを昭和初期に作成された地図に記したもので、1930(昭和5)年に建てられた記念館は赤二重丸の位置である。
農商務省鳥獣実験場 標本館 1986(昭和61)年8月
[公益財団法人多摩市文化振興財団撮影]
元の御猟場の地に鳥類などの標本を保存する目的で1923(大正12)年4月に建てられた、多摩村初の本格的洋風木造建築であった。1996(平成8)年老朽化により取り壊された。
旧多摩聖蹟記念館落成式当時の記念写真 1930(昭和5)年
[『多摩市史 資料編4』より]
1930(昭和5)年11月9日開館式をおこなった。最前列中央で杖を持つ和服の男性(右から7番目)が田中光顕である。
明治天皇騎馬像除幕式の記念写真 1930(昭和5)年
[『多摩の聖蹟』より]
若き日の明治天皇の姿を彫塑家渡辺長男が製作した像を建物中央に設置した。この写真によると、当初は神格化された空間に設えている事が分かる。