農業から商店主へ

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 もともと多摩ニュータウン区域内で農業を営んでいた地元の人々は、開発に際して、離農・転業を余儀なくされました。それは、多摩ニュータウンの根拠法とされた「新住宅市街地開発法」が開発区域内に農地の分布を認めていなかったからです。
 一方、同法では、土地を提供したことにより生活の基盤を失った人々に対して、その再出発を支援する「生活再建措置」も義務づけていました。1965(昭和40)年11月に定められた「生活再建措置要綱」では、こうした「生活再建者」に対して、代替農地のあっせんや営農指導などが定められていましたが、実際には、団地内店舗への優先出店のみが残された道で、1968(昭和43)年末までに耕作停止の通告を受けました。
 優先措置を受けるためには講習会を受講することが義務づけられ、日本住宅公団では、転業指導講習会を開催しました。この講習を受けた後、それぞれ酒屋、書店、文房具屋、八百屋、米屋など、団地内商店の店主となっていきました。(金子淳)
生活再建者講習の様子 1969(昭和44)年

生活再建者講習の様子 1969(昭和44)年

[UR都市機構寄贈資料・公益財団法人多摩市文化振興財団所蔵/『多摩・商店ことはじめ』より]

講習は第三次まであった。第一次講習は1969(昭和44)年8月4日から15日まで多摩町農協でおこなわれ、250人以上が参加した。


住区サービス戸割店舗応募状況 1977(昭和52)年12月15日

住区サービス戸割店舗応募状況 1977(昭和52)年12月15日

[公益財団法人多摩市文化振興財団所蔵/『多摩・商店ことはじめ』より]

店舗への出店方法は①生活再建者の優先出店、②地元優先措置に基づく市商工課選定による出店、③公募による出店の3種があった。


商業転業者に対する講習テキストと講習修了証書1 1969(昭和44)年
商業転業者に対する講習テキストと講習修了証書2 1969(昭和44)年

商業転業者に対する講習テキストと講習修了証書 1969(昭和44)年

[公益財団法人多摩市文化振興財団所蔵/『多摩・商店ことはじめ』より]

簿記・会計など、商店経営にあたっての基礎知識・技能に関する講習や、希望業種の個別講習がおこなわれた。


豊ヶ丘商店街「やまに精肉店」開店初日の様子 1976(昭和51)年3月25日

豊ヶ丘商店街「やまに精肉店」開店初日の様子 1976(昭和51)年3月25日

[峯岸虎夫氏所蔵/『多摩・商店ことはじめ』より]

豊ヶ丘商店街は1976(昭和51)年3月25日、貝取団地・豊ヶ丘団地の入居とともにオープンした。