【解読文】
PDF(縦書き)で読む
乍恐御訴訟申上候御事
一両町田村之儀ハ先年一村ニ而御座候処ニ北条奥州様御
領地之御時本町田村之儀ハ人居多ク候得共谷間入郷之事ニ
[ ]間之原江罷出新町ヲ取立御役相勤候得由被仰付候ニ
付而一村ヲ二ツニ分八十年已前ニ原町田村取立申候其証拠ニハ
于今本町田原町田と申来候其上一月ニ六市立申候市を
二ツニ分一村ニ三市宛于今立来申候御事
一両村間之原之儀ハ前々より入合草かり場ニ而御座候間已前
御領所之御時并ニ駿河 大納言様御領地当 御地頭様御持ニ
罷成候ても本町田古来之庄屋玄番存生之内ハ互ニ
致吟味彼野ニ新開不仕候処ニ玄番相果申候已後近年
新開或ハ野中ニうへ松うへかや新林大分ニ仕間之原馬
草取場一円無之様ニ我□(か)まゝ仕候儀何共迷惑ニ奉存
御事
一本町田庄屋衆方江断仕候者間之原之儀ハ前々入合草
かり場ニ御座候処ニ何とて新開新林被致候哉百姓中江御相談
被成前々之通芝野ニ被成互ニ云分無之様ニ被遊可然と相
断申候ヘハ尤之由被申其後使ニ而返事被申候者内証
相談ニ仕度候得共百姓共先方之古畑荒レ地ヲ開申候□(間)
荒シ申事成難由申候間不及是非ニと返事被申候御事
一重而此方より断申候者百姓衆先方之古畑今更開申候間
荒事成間敷由被仰越候乍去大久保石見様御縄打之
前後六七十年已来間之原ニ畑壱枚も有之事ハ老人共も
覚不申候間能々御分別被成百姓衆江御異見被遊前
のことく芝野ニ被成可然候若御合点無之候ハヽ原町田より
訴申越御地頭様江御窺被成内証相談ニ被成可給候
加様申儀ハ縦御領分ハ相替リ候へても上々御一門様之御事ニ
御座候間六ヶ敷ニ仕候事迷惑ニ奉存故如此申と断候ヘハ
次日返事被申候様ハ百姓衆ニ為申聞候へハ 御地頭様江此
方より窺申事罷成間敷由庄屋衆方より返事被致
候故不及是非ニ乍恐御訴訟申上候御事
一本町田村之儀ハ方々草かり場広ク御座候へハ事かけ
不申候故人之痛も不存加様成我かまゝ仕事ニ御座候
原町田之義ハ此野ニ而馬草かり不申候へハ役馬もかつへ
作式之さわりニも罷成候へハ何共迷惑ニ奉存候先年
新町江罷出候時前々持来候田畑山林本町田ニすて置
野中江罷出候へハ原町田村之者ニ候て開山林ヲも可仕処ニ
馬草取場間之原計ニ而御座候間吟味いたし新開
少も不仕候処ニ剰本町田より間之原入合之場ニ新開
新林或ハうへ松うへかや大分ニ仕草かり場一円無之
様ニ我かまゝ仕候事何方ニも古今承及たる儀も無御座
候御事
右之条々御穿鑿之上前々之通被仰付被下候ハヽ
有難可奉存候以上 原町田村
寛文三年卯ノ五月廿五日 惣百姓(印)
八左右衛門(印)
久留六郎右衛門様 七郎兵衛(印)
御内御家老中様 平右衛門(印)
【読み下し文】
PDF(縦書き)で読む
恐れ乍ら御訴訟申し上げ候御事
一、両町田村の儀は、先年一村にて御座候処に、北條奥州様御領地
の御時、本町田村の儀は人居多く候得共、谷間入郷の事に[ ](虫損)間の原
え罷り出で、新町を取り立て、御役相勤め候得由仰せ付けられ候に付て、
一村を二つに分け、八十年已前に原町田村取り立て申し候、其の証拠
には、今に本町田・原町田と申し来たり候、其の上一月に六市立て申し
候市を二つに分け、一村に三市宛今に立て来たり申し候御事
一、両村間の原の儀は、前々より入合草かり場にて御座候間、已前御領所
の御時并に駿河大納言様御領地、当御地頭様御持ちに罷り成り候ても、
本町田古来の庄屋玄蕃存生の内は互いに吟味致し、彼の野に新開仕ら
ず候処に、玄蕃相果て申し候已後、近年新開或いは野中にうへ松・う
へかや新林大分に仕り、間の原馬草取り場一円之れなき様に我がまま仕
り候儀、何共迷惑に存じ奉る御事。
一、本町田庄屋衆方え断じ仕り候は、間の原の儀は前々入合草かり場
に御座候処に、何とて新開・新林致され候哉、百姓中え御相談成
され、前々の通り芝野に成され、互いに云い分之れ無き様に遊ばされ然る
べしと相断じ申し候えば、尤もの由申され、其の後使いにて返事申され
候は、内証相談に仕り度く候得共、百姓共先方の古畑荒れ地を開き申
し候間、荒し申す事成り難き由申し候間、是非に及ばずと返事申さ
れ候御事
一、重ねて此方より断じ申し候は、百姓衆先方の古畑今更開き申し
候間、荒れ事成る間敷き由仰せ越され候。去り乍ら大久保石見様御縄打
の前後六、七十年已来、間の原に畑壱枚も之れ有る事は老人共も覚え申
さず候間、能く能く御分別成され百姓衆え御異見遊ばされ、前のご
とく芝野に成され然るべく候、若し御合点之れ無く候はば原町田より訴
え申し越し、御地頭様え御窺い成され、内証相談に成され給ふべく候、
加様申す儀は、縦え御領分は相替り候へても、上々御一門様の御事に御
座候間、六つか敷きに仕り候事迷惑に存じ奉る故、此くの如く申す
と断じ候へば、次日返事申され候様は、百姓衆に申し聞かせ候へば、
御地頭様え此方より窺い申す事罷り成る間敷き由、庄屋衆方より返事致
され候故、是非に及ばず、恐れ乍ら御訴訟申し上げ候御事
一、本町田村の儀は、方々草かり場広く御座候へば事かけ申さず候故、人
の痛みも存ぜず加様成る我がまま仕る事に御座候、原町田の義は此の野
にて馬草かり申さず候へば役馬もかつへ、作式のさわりにも罷り成り候へ
ば、何共迷惑に存じ奉り候、先年新町え罷り出で候時、前々持ち来た
り候田畑・山林本町田にすて置き、野中え罷り出で候へば、原町田村の
者に候て開山林をも仕るべき処に、馬草取り場間の原計りにて御座候
間、吟味いたし新開少しも仕らず候処に、剰え本町田より間の原入合
の場に新開・新林或いはうへ松・うへかや大分に仕り、草かり場一円之
れ無き様に我がまま仕り候事、何方にも古今承り及びたる儀も御座無
く候御事
右の条々御穿鑿の上、前々の通り仰せ付けられ下され候はば、有り難く
存じ奉るべく候、以上 原町田村
寛文三年卯ノ五月廿五日 惣百姓(印)
八左右衛門(印)
久留六郎右衛門様 七郎兵衛(印)
御内御家老中様 平右衛門(印)