乍恐以書付奉願上候(山口房之助知行所勝手向不如意につき金510両余出金仰付けのところ勘弁を願う旨)

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     乍恐以書付奉願上候
一山口房之助知行所武州多麻郡野津田村
 名主佐野右衛門同国同郡小野路村名主弥十郎
 上総国武射郡同国山辺郡六ヶ村惣代
 富田村善兵衛岩山村友右衛門金谷村平兵衛
 奉申上候此度地頭所用向ニ付私共可罷出
 之旨被仰渡候間罷出候処被仰渡候者
 地頭所勝手向不如意ニ付此度金五百拾両
 余之処出金可致旨被仰渡候得共前々より
 先納仕候上ハ金子調達不仕候間、御答
 申上候処左候ハヽ武州上総両知行所ニて
 右金五百拾両余之処内金三百六拾両余
 請書可仕旨被仰渡候得共是迄年々先納
 金被仰付度々之儀候困窮之百姓
 何様ニ茂金子調達不仕候旨先年茂
 申上候処御助成金拝借先納仕候様
 被 仰渡候間御代官江川太郎左衛門様
 御役所ニ而両度ニ金七拾壱両壱分永拾弐文五分
 五ヶ年季ニ拝借先納仕候処田畑収納
 金者年々御地頭所江皆済 被仰付候間
 御屋敷より右拝借利金御納可被成旨之
 御約諾ニ御座候処去丑年茂江川様
 御役所より御差紙頂戴又候当春茂
 大貫治右衛門様より御差紙到来奉恐驚候
 仕合猶又四ヶ年已前茂先納金被
 仰付候砌リ困窮之百姓故調達不仕
 候ニ付其旨申上候処簔笠之助様
 御役所御助成金拝借先納可致旨
 被仰付候間無拠拝借先納仕候三ヶ年
 已前茂右之始末御座候ニ付又候
 簔笠之助様御役所御助成金拝借
 先納可仕旨被仰付候間拝借仕両度ニ
 御助成金百両余先納仕候右御助成金
 四口合金百七拾両余拝借先納仕候
 最早村方ニ寄先之納ニ相当リ候
 村方茂有之候惣而村々借居并年
 賦金等御払被下候得ハ一統先之納ニ相
 当リ候義ニ御座候然処右之先納金
 被 仰付当惑至極仕候併房之助
 御乗出シ等ニ而茂有之候而之入用金ニ
 御座候ハヽ何分才覚仕先納可仕与
 奉存候得共左様之義ニ而無御座候故
 年々弥増ニ先納被仰付是迄
 之儀も全御隠居方ニ而何歟入用金
 多ク御座候而右之始末与奉存候此度
 勝手不如意ニ相成リ被仰付候先納
 金茂何歟無益之金子等御座候
 哉ニ奉存候既先年用人斎木平太夫
 勤役中勝手賄御渡被成候ハヽ御
 親類中様も御本家奉勧一統
 和睦相調可申旨御諫言奉申上候処
 於其儀者尤之事与御隠居其趣
 聞済之上賄被相渡依之斎木平太夫
 仕法相立知行所江右之趣被申
 聞候間難有承知奉畏則出金
 請書差出し刻右斎木平太夫儀
 御隠居以之外打擲被致其上差控
 被仰付剰永之御暇被仰付候其■より
 引続キ今年迄御隠居手賄被致
 候ニ付無益之金子等無御厭心儘ニ
 被遣捨地頭所差支ニ相成リ并知行所
 難義仕候間無是非今般右之始末ニ
 御座候何卒此上地頭所之難渋ニ不相
 成并百姓相続仕候処此上之御取
 締リ宜敷様御勘弁被成下偏ニ
 御慈悲奉願上候御憐愍ヲ以願之
 通リ被仰付被下置候ハヽ地頭所
 勝手向雑用金之義ハ何れ相働キ
 先納可仕候只行々先納仕候而ハ却而
 地頭所之為ニ茂不相成無益之出金ニ
 百姓亡地与奉存候何分地頭所繁栄
 并百姓御憐愍与被 為聞召是迄ミン
 地頭所勝手向不取締リ之義ハ
 御隠居手賄故与乍恐奉存候委細
 之義ハ御尋之上別帳ニ相認メ可
 奉入御覧候猶又口上ヲ以可奉申
 上候願之通リ被仰付被下置候ハヽ
 御憐愍与難有仕合奉存候以上

      山口房之助知行所
       上総国武射郡
       同国山辺郡
 寛政六年   六ヶ村惣代
  寅二月     富田村
         善兵衛
        岩山村
         友右衛門
        金谷村
         平兵衛
      武州多麻郡
        野津田村
         佐野右衛門
      同州同郡
        小野路村
          弥十郎
 御小普請組御支配
  青山美濃守様
      御役所
 


 
【読み下し文】

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     (おそ)れながら(かき)(つけ)(もつ)(ねが)()(たてまつ)(そうろう)
(ひとつ)、山口房之助知行所(ちぎようしよ)武州(ぶしゆう)多麻郡(たまぐん)野津田村(のづたむら)名主(なぬし)佐野右衛門、同国(どうこく)同郡(どうぐん)小野(おの)
路村(じむら)名主(なぬし)弥十郎(やじゆうろう)上総国(かずさのくに)武射郡(むしやぐん)同国(どうこく)山辺郡(やまべぐん)(ろく)(そん)惣代(そうだい)富田村(とみたむら)善兵衛(ぜんべえ)(いわ)
山村(やまむら)友右衛門(ともうえもん)金谷村(かなやむら)平兵衛(へいべえ)(もう)()(たてまつ)(そうろう)此度(こたび)地頭所(じとうしよ)(よう)()きに()き、
私共(わたしども)(まか)()ずべきの(むね)(おお)(わた)され(そうろう)(あいだ)(まか)()(そうろう)(ところ)(おお)(わた)され(そうろう)は、
地頭所(じとうしよ)勝手(かつて)()不如意(ふによい)()き、此度(こたび)(きん)五百拾(ごひやくじゆう)(りよう)(あま)りの(ところ)出金(しゆつきん)(いた)すべき(むね)
(おお)(わた)され(そうら)()(ども)前々(まえまえ)より先納(せんのう)(つかまつ)(そうろう)(うえ)金子(きんす)調達(ちようたつ)(つかまつ)らず(そうろう)(あいだ)
御答(おこた)(もう)()(そうろう)(ところ)()(そうら)()武州(ぶしゆう)上総両(かずさりよう)知行所(ちぎようしよ)にて、(みぎ)(きん)五百拾(ごひやくじゆう)
(りよう)(あま)りの(ところ)内金(うちきん)三百六拾(さんびやくろくじゆう)(りよう)(あま)請書(うけがき)(つかまつ)るべき(おお)(わた)され(そうら)()(ども)(これ)
(まで)年々(ねんねん)先納(せんのう)(きん)(おお)()けられ、度々(たびたび)()(そうろう)困窮(こんきゆう)百姓(ひやくしよう)何様(いかよう)にも金子(きんす)調(ちよう)
(たつ)(つかまつ)らず(そうろう)(むね)先年(せんねん)(もう)()(そうろう)(ところ)()助成金(じよせいきん)拝借(はいしやく)先納(せんのう)(つかまつ)(そうろう)(よう)(おお)
(わた)され(そうろう)(あいだ)()代官(だいかん)江川(えがわ)太郎左衛門(たろうざえもん)(さま)御役所(おやくしよ)にて両度(りようど)(きん)七拾壱(ななじゆういち)(りよう)
壱分(いちぶ)永拾(えいじゆう)弐文(にもん)五分(ごぶ)()()年季(ねんき)拝借(はいしやく)先納(せんのう)(つかまつ)(そうろう)(ところ)田畑(たはた)収納金(しゆうのうきん)年々(ねんねん)()()
頭所(とうしよ)皆済(かいさい)(むね)(おお)()けられ(そうろう)て、御屋敷(おやしき)より(みぎ)拝借(はいしやく)利金(りきん)()(おさ)()らるべき
(むね)()約諾(やくだく)御座(ござ)(そうろう)(ところ)()丑年(うしどし)江川(えがわ)(さま)御役所(おやくしよ)より()差紙(さしがみ)頂戴(ちようだい)又候(またぞろ)当春(とうはる)
大貫(おおぬき)治右衛門(じうえもん)(さま)より()差紙(さしがみ)到来(とうらい)(おそ)(おどろ)(たてまつ)るの仕合(しあわ)せに、(なお)(また)(よん)(ねん)已前(いぜん)
先納金(せんのうきん)(おお)()けられ(そうろう)(みぎ)り、困窮(こんきゆう)百姓(ひやくしよう)(ゆえ)調達(ちようたつ)(つかまつ)らず(そうろう)()
き、()(もう)()(そうろう)(ところ)(みの)笠之助(かさのすけ)(さま)御役所(おやくしよ)()助成金(じよせいきん)拝借(はいしやく)先納(せんのう)(いた)すべき(むね)(おお)
()けられ(そうろう)(あいだ)(よんどころ)なく拝借(はいしやく)先納(せんのう)(つかまつ)(そうろう)(さん)(ねん)已前(いぜん)(みぎ)始末(しまつ)
御座(ござ)(そうろう)()き、(また)(ぞろ)(みの)笠之助(かさのすけ)(さま)御役所(おやくしよ)()助成金(じよせいきん)拝借(はいしやく)先納(せんのう)(つかまつ)るべき(むね)(おお)
()けられ(そうろう)(あいだ)拝借(はいしやく)(つかまつ)両度(りようど)()助成金(じよせいきん)百両(ひやくりよう)(あま)先納(せんのう)(つかまつ)(そうろう)
(みぎ)()助成金(じよせいきん)四口(よんくち)(あわ)せて(きん)百七拾(ひやくななじゆう)(りよう)(あま)拝借(はいしやく)先納(せんのう)(つかまつ)(そうろう)最早(もはや)村方(むらかた)に寄()
先々(さきざき)(おさ)めに相当(あいあた)(そうろう)村方(むらかた)もこれ()(そうろう)(そう)じて村々(むらむら)()()(なら)びに(ねん)
賦金(ぷきん)(など)御払(おはら)(くだ)され(そうら)()一統先(いつとうさき)(おさ)めに相当(あいあた)(そうろう)()御座(ござ)(そうろう)(しか)
(ところ)(みぎ)先納(せんのう)(おお)()けられ当惑(とうわく)至極(しごく)(つかまつ)(そうろう)(しかし)ながら房之助(ふさのすけ)御乗(おの)()
(など)にてもこれ()(そうろう)ての入用金(にゆうようきん)御座(ござ)(そうら)()ば、何分(なにぶん)才覚(さいかく)(つかまつ)先納(せんのう)(つかまつ)
るべきと(ぞん)(たてまつ)(そうら)()(ども)左様(さよう)()にて御座(ござ)なく(そうろう)(ゆえ)年々(ねんねん)弥増(いやまし)先納(せんのう)(おお)
()けられ、是迄(これまで)()(まつた)()隠居(いんきよ)(かた)にて(なに)入用(にゆうよう)(きん)(おお)御座(ござ)(そうろう)て、(みぎ)
始末(しまつ)(ぞん)(たてまつ)(そうろう)此度(こたび)勝手(かつて)不如意(ふによい)相成(あいな)(おお)()けられ(そうろう)先納金(せんのうきん)
(なに)無益(むえき)金子(きんす)(など)御座(ござ)(そうろう)()(ぞん)(たてまつ)(そうろう)(すで)先年(せんねん)用人(ようにん)斎木平太夫(さいきへいだゆう)
(つとめ)役中(やくちゆう)勝手(かつて)(まかない)()(わた)()され(そうら)()ば、()親類(しんるい)中様(ちゆうさま)御本家(ごほんけ)(すす)(たてまつ)り、
一統(いつとう)和睦(わぼく)(あい)調(ととの)(もう)すべき()諫言(かんげん)(もう)()(たてまつ)(そうろう)(ところ)()()において
(もつと)もの(こと)()隠居(いんきよ)()(おもむ)()()みの(うえ)(まかな)相渡(あいわた)され、これに()(さい)
木平太夫(きへいだゆう)仕法(しほう)相立(あいた)て、知行所(ちぎようしよ)(みぎ)(おもむ)(もう)()かされ(そうろう)(あいだ)()(がた)
承知(しようち)(かしこ)(たてまつ)り、(すなわち)出金(しゆつきん)請書(うけがき)()()刻右(ときみぎ)斎木平太夫(さいきへいだゆう)()()隠居(いんきよ)(もつ)ての
(ほか)打擲(ちようちやく)(いた)され、()(うえ)()(ひか)(おお)()けられ、(あまつさ)(えい)()(いとま)(おお)()けら
(そうろう)()(せつ)より()(つづ)今年(ことし)(まで)()隠居(いんきよ)()(まかない)(いた)され(そうろう)()き、無益(むえき)
金子(きんす)(など)御厭(おいと)いなく心儘(こころまま)(つか)()てられ、地頭所(じとうしよ)()(つか)えに相成(あいな)(なら)びに()
行所(ぎようしよ)難義(なんぎ)(つかまつ)(そうろう)(あいだ)是非(ぜひ)なく今般(こんぱん)(みぎ)始末(しまつ)御座(ござ)(そうろう)何卒(なにとぞ)()(うえ)()
頭所(とうしよ)難渋(なんじゆう)相成(あいな)らず(なら)びに百姓(ひやくしよう)相続(そうぞく)(つかまつ)(そうろう)(よう)()(うえ)()取締(とりしま)(よろ)
敷様(しきよう)()勘弁(かんべん)()(くだ)だされ、(ひと)えに御慈悲(ごじひ)(ねが)()(たてまつ)(そうろう)()憐愍(れんびん)(もつ)(ねが)
いの(とお)(おお)()けられ(くだ)()かれ(そうら)()ば、地頭所(じとうしよ)勝手(かつて)向雑(むきぞう)用金(ようきん)()(いず)(あい)
(はたら)先納(せんのう)(つかまつ)るべく(そうろう)(ただ)行々(ゆくゆく)先納(せんのう)(つかまつ)(そうろう)ては(かえ)って地頭所(じとうしよ)(ため)にも
(あい)()らず、無益(むえき)出金(しゆつきん)百姓(ひやくしよう)()()(ぞん)(たてまつ)(そうろう)何分(なにぶん)地頭所(じとうしよ)繁栄(はんえい)(なら)
びに百姓(ひやくしよう)()憐愍(れんびん)(きこ)()させられ、是迄(これまで)地頭所(じとうしよ)勝手(かつて)()()取締(とりしま)りの()()
隠居(いんきよ)手賄(てまかな)(ゆえ)(おそ)れながら(ぞん)(たてまつ)(そうろう)委細(いさい)()御尋(おたず)ねの(うえ)別帳(べつちよう)
相認(あいしたた)御覧(ごらん)()(たてまつ)るべく(そうろう)猶又(なおまた)口上(こうじよう)(もつ)(もう)()(たてまつ)るべく
(そうろう)(ねが)いの(とお)(おお)(
)
けられ(くだ)()かれ(そうら)()()憐愍(れんびん)()(がた)仕合(しあわ)せに
(ぞん)(たてまつ)(そうろう)以上(いじよう)

      山口房之助知行所
       上総国武射郡
       同国山辺郡
 寛政六年   六ヶ村惣代
  寅二月     富田村
         善兵衛
        岩山村
         友右衛門
        金谷村
         平兵衛
      武州多麻郡
        野津田村
         佐野右衛門
      同州同郡
        小野路村
          弥十郎
 御小普請組御支配
  青山美濃守様
      御役所