【解読文】
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「 天保十亥年正月
秋葉道中日記ノ控
下小山田村
若林氏」
目出度初り
亥正月二日秋葉寺江出立
同日雲(曇)リ昼ヨリ小雨少々降リ出し
星谷勘(観)音堂前迄要助馬ニ乗リ
一廿八文 星谷茶代厚木
渡し場はし銭
一四拾八文 厚木釜成屋
昼飯料
同日早七ツ時大磯宿ヘ着
二日晩泊リ大磯宿右(左)リ側
山本屋甚右衛門
一弐百廿四文 同旅籠代
一廿四文 同所茶代割
三日小雨降リ
大磯宿より出立夫ヨリ不休湯本迄
五里行同日昼飯湯本ニ而支度
一四拾八文 湯本昼飯代
一拾六文 わらんじ代
夫ヨリ壱里行畑宿ニ而小休致
一六拾文 畑宿雑煮代
是より山坂難所之道也七ツ時頃
御関所ヲ通リ
三日晩泊リ箱根宿右(左)リ側
はふや四郎右衛門
一弐百四拾八文 同所はたご
一四拾九文 茶代割合
一三十弐文 途中茶料
四日雪降リ
箱根より三島ヘ加(駕)籠ニ三朱ニ而乗リ
雪雨まじり降リ誠道悪敷夫ヨリ
途中より不快ニ而沼津迄又六百文ニ而
乗リ九ツ半時頃沼津ヘ着
同日泊リ沼津町右(左)リ側
元問屋
一三百文 はたご
一三十弐文 吉原昼飯
一三十弐文 わらんじ弐足
五日沼津より出立
一三十弐文 元市場
白酒
サツタ峠
一四拾八文 あわび焼
一三十六文 富士川船賃
五日朝沼津より出立吉原ニ而
昼飯支度元市場富士の
白酒小休致同日沖(興)津宿ヘ
暮方ニ着
五日晩泊リ沖(興)津宿右(左)リ側
ミのぶ屋
同日
一弐百四拾八文 はたご
六日雨降リ
朝沖(興)津宿より出立夫ヨリ
府中町迄不休行御城下
通リ仕舞阿部(安倍)川手前ニ而
餅名物ニ而小休致此所
川越問屋ニ而賃銭壱人前
四拾五文づゝ出し川こし致
夫ヨリ丸子宿ニ而名物とろゝ汁
くい夫ヨリ宇津の谷峠十団子
より下リテ岡部宿ヘ出ル
六日
一十、五拾文 阿部(安倍)川餅
一六拾四文 丸子とろゝ汁
一廿四文 くし柿
一四拾八文 わらじ
一廿八文 藤枝月代
六日晩泊リ
藤枝宿左リ側
紀伊国屋源兵衛
一弐百廿四文 はたご
七日
藤枝宿より出立宿外レ直ニ
瀬戸川拾六文越し賃外ニ
八文心つき遣ス夫ヨリ島田宿也
大井川越賃定リ此節水増ニ付
九拾弐文之掛札有之壱人前
三百文払ひ四人ニ而連台ニ而
越し上リテ百文四人江祝儀遣ス
是ヨリカナヤ宿也峠壱ツ越し又
壱ツ登リテ小夜の中山あめの餅
峠也是より下リテ日坂宿也
日坂宿ニ而
一四拾八文 昼飯
一拾六文 あめ壱本
一拾文 同餅
一四拾文 ミかん草(菓)子
夫ヨリ掛川宿外レより
秋葉山御鳥居より入此所より
五十丁道三里行
七日晩泊リ
森町右(左)リ側
いづミや
一弐百四拾八文 はたご代
八日晴天ニ成ル
森町より出立途中より戌亥(犬居)迄
百四拾八文ニ而馬ニ乗リ同所ニ而
昼飯支度致八ツ半頃麓町ヘ
着夫ヨリ御山ヘ登山致し
茶漬酒肴沢山出ル茶料と
して四人ニ而弐百文出し
同日泊リ麓町右(左)り側
高木屋安兵衛
一三百文 はたご
弐百七十弐文
森町
一三百七拾弐文 足袋壱足
一百文 途中草(菓)子品々
一四拾八文 麓ニ而あんま
九日晴天
麓より出立夫ヨリ三倉ニ而
小休致し直ニ出立森町にて
森町
一七十弐文 昼飯料
森町より掛川宿まで
五十丁道三里仕立加(駕)籠ニ
乗リ壱朱ト五拾文賃銭也
外ニ四拾八文酒代遣ス
九日晩泊リ
掛川宿
ねじがね屋
一弐百四拾八文 はたご
十日晴天
掛川宿より出立夫ヨリ日坂より
金谷宿迄峠弐ツ有リ此所
弐百文ニ而加(駕)籠ニ乗リ夫ヨリ
大井川賃弐百七拾八文にて
越し島田宿ニ而昼飯此所より
藤枝迄弐百文ニ而加(駕)籠ニ乗リ
藤枝より岡部迄百七拾弐文ニ而
加(駕)籠ニ乗リ同日泊リハ
丸子宿右(左)リ側
桑名屋善兵衛
一弐百四拾八文 はたご
十一日雨降リ
丸子宿より出立阿部(安倍)川
四拾五文ニ而早朝ニ越し夫ヨリ
府中宿ヘ出此所より段々
雨大降リに成江尻宿へ出る
沖(興)津清見寺前茶やにて
七拾弐文ニ而昼飯支度
此所より雪雨まじり
大降リ夫ヨリさつた峠ヘ掛リ
八ツ半時頃由井(比)宿ヘ着
同日泊リ
由井(比)宿右(左)り側
うんどん屋
此内当宿壱番ノ能宿也
一弐百四拾八文 はたご
十二日晴天
由井(比)宿より出立夫ヨリ岩渕
栗の粉名物ニ而小休いたし
藤(富士)川廿四文船賃払渡リ
元市場白酒ニ而小休致し
夫ヨリヨシ原宿より原宿迄
百廿四文ニ而馬ニ乗リ原宿ニ而
昼飯支度夫ヨリ沼津
御城下町ヲ通リ同日
七ツ時頃三島宿ヘ着致
十二日晩泊リ
三島明神前右(左)り側
松葉や
一弐百四拾八文 はたご
藤枝より岡部迄百七拾弐文ニ而
加(駕)籠ニ乗リ同日泊リハ
丸子宿右(左)リ側
桑名屋善兵衛
一弐百四拾八文 はたご
十一日雨降リ
丸子宿より出立阿部(安倍)川
四拾五文ニ而早朝ニ越し夫ヨリ
府中宿ヘ出此所より段々
雨大降リに成江尻宿へ出る
沖(興)津清見寺前茶やにて
七拾弐文ニ而昼飯支度
此所より雪雨まじり
大降リ夫ヨリさつた峠ヘ掛リ
八ツ半時頃由井(比)宿ヘ着
同日泊リ
由井(比)宿右(左)り側
うんどん屋
此内当宿壱番ノ能宿也
一弐百四拾八文 はたご
十二日晴天
由井(比)宿より出立夫ヨリ岩渕
栗の粉名物ニ而小休いたし
藤(富士)川廿四文船賃払渡リ
元市場白酒ニ而小休致し
夫ヨリヨシ原宿より原宿迄
百廿四文ニ而馬ニ乗リ原宿ニ而
昼飯支度夫ヨリ沼津
御城下町ヲ通リ同日
七ツ時頃三島宿ヘ着致
十二日晩泊リ
三島明神前右(左)り側
松葉や
一弐百四拾八文 はたご
右之もの共此度遠州秋葉寺江
参詣之者ニ相違無御座候間
御関所御通セ被為遊可被下候依之
通リ手形奉差出候処如件
武州多摩郡下小山田村
天保十亥年正月二日 名主
何右衛門
相州箱根
御関所
御役人中様
【読み下し文】
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十亥年正月
秋葉道中日記の控
下小山田村若林氏
 
目出度き初まり
亥正月二日秋葉寺え出立、同日曇り、昼より小雨少々降り出し、星谷観
音堂前迄要助馬に乗り
一、廿八文 星谷茶代・厚木渡し場はし銭
一、四拾八文 厚木釜成屋昼飯料
同日早七つ時大磯宿へ着く、
二日晩泊り、大磯宿右り側山本屋甚右衛門
一、弐百廿四文 同旅籠代
一、廿四文 同所茶代割り
三日小雨降り
大磯宿より出立、夫れより休まず湯本迄五里行く、同日昼飯湯本にて支度
一、四拾八文 湯本昼飯
代一、拾六文 わらんじ代
夫れより壱里行く、畑宿にて小休致す
一、六拾文 畑宿雑煮代
是より山坂難所の道なり、七つ時頃御関所を通り、三日晩泊り、箱根宿右り側
はふや四郎右衛門
一、弐百四拾八文 同所はたご
一、四拾九文 茶代割合
一、三十弐文 途中茶料
四日雪降り
箱根より三島ヘ駕籠に三朱にて乗り、雪雨まじり降り、誠道悪敷く、夫れよ
り途中より不快にて沼津迄又六百文にて乗り、九つ半時頃沼津ヘ着く、同
日泊り、沼津町左り側元問屋
一、三百文 はたご
一、三十弐文 吉原昼飯
一、三十弐文 わらんじ八足
五日沼津より出立
一、三十弐文 元市場 白酒
一、四拾八文 さった峠 あわび焼き
一、三十六文 富士川船賃
五日朝沼津より出立、吉原にて昼飯支度、元市場富士の白酒小休致す、
同日興津宿ヘ暮方に着く、五日晩泊り興津宿左り側みのぶ屋
同日
一、弐百四拾八文 はたご
六日雨降り
朝興津宿より出立、夫れより府中町迄休まず行く、御城下通り仕舞、
安倍川手前にて餅名物にて小休致す、此の所川越し問屋にて賃銭壱人前四
拾五文づつ出し川こし致す、夫れより丸子宿にて名物とろろ汁くい、夫れ
より宇津谷の峠十団子より下りて岡部宿ヘ出る
六日
一、十、五拾文 安倍川餅
一、六拾四文 丸子とろろ汁
一、廿四文 くし柿
一、四拾八文 わらじ
一、廿八文 藤枝月代
六日晩泊り、
藤枝宿左り側 紀伊国屋源兵衛
一、弐百廿四文 はたご
七日
藤枝宿より出立、宿外れ直ちに瀬戸川拾六文越し賃、外に八文心づき遣
す、夫れより島田宿なり、大井川越し賃定り、此の節水増しに付き九拾弐文
の掛け札之れ有り、壱人前三百文払ひ、四人にて連台にて越し、上りて百
文四人え祝儀遣す、是よりかなや宿なり、峠壱つ越し又壱つ登りて小夜
の中山あめの餅峠なり、是より下りて日坂宿なり
日坂宿にて
一、四拾八文 昼飯
一、拾六文 あめ壱本
一、拾文 同餅
一、四拾文 みかん菓子
夫れより掛川宿外れより秋葉山御鳥居より入る、此の所より五十町道三
里行く、七日晩泊り、森町左り側いづみや
一、弐百四拾八文 はたご代
八日晴天に成る
森町より出立、途中より犬居迄百四拾八文にて馬に乗り、同所にて昼飯
支度致し、八つ半頃麓町ヘ着く、夫れより御山ヘ登山致し、茶漬・酒・肴
沢山出る、茶料として四人にて弐百文出し、同日泊り、麓町右り側高木屋
安兵衛
一、三百文 はたご
弐百七十弐文
一、三百七拾弐文 森町足袋壱足
一、百文 途中菓子品々
一、四拾八文 麓にてあんま
九日晴天
麓より出立、夫れより三倉にて小休致し直ちに出立、森町にて
一、七十弐文 森町昼飯料
森町より掛川宿まで五十町道三里、仕立て駕籠に乗り壱朱と五拾文賃銭
なり、外に四拾八文酒代遣す、九日晩泊り、掛川宿ねじがね屋
一、弐百四拾八文 はたご
十日晴天
掛川宿より出立、夫れより日坂より金谷宿迄峠弐つ有り、此の所弐百文
にて駕籠に乗り、夫れより大井川賃弐百七拾八文にて越し、島田宿にて昼
飯、此の所より藤枝迄弐百文にて駕籠に乗り、藤枝より岡部迄百七拾弐文
にて駕籠に乗り、同日泊りは丸子宿左り側 桑名屋善兵衛
一、弐百四拾八文 はたご
十一日雨降り
丸子宿より出立、安倍川四拾五文にて早朝に越し、夫れより府中宿へ出
づ、此の所より段々雨大降りに成る、江尻宿へ出る、興津清見寺前茶やに
て七拾弐文にて昼飯支度、此の所より雪雨まじり大降り、夫れよりさった峠
へ掛り、八つ半時頃由比宿へ着く、同日泊り、由比宿右り側 うんどん屋、
此の門当宿壱番の能き宿なり
一、弐百四拾八文 はたご
十二日晴天
由比宿より出立、夫れより岩渕栗の粉名物にて小休いたし、藤川廿四
文船賃払い渡り、元市場白酒にて小休致し、夫れよりよし原宿より原宿
迄百廿四文にて馬に乗り、原宿にて昼飯支度、夫れより沼津御城下町を通
り、同日七つ時頃三島宿へ着致す、十二日晩泊り、三島明神前右り側松葉
や
一、弐百四拾八文 はたご
十三日曇り
三島宿より出で立ちて山田茶屋にて小休致す、此の所より箱根宿迄弐
百文にて駕籠に乗り、四拾八文酒代遣す、箱根宿はふやにて小休、夫
れより畑宿にて休む、小田原町へ八つ少々過ぎに着く、夫れより大磯宿
迄金弐朱にて駕籠に乗り、暮六つ時大磯宿ヘ着く、十三日泊り、大磯宿山
本屋甚右衛門
一、百廿四文 はたご代
十四日天晴れ
大磯宿より出立、厚木宿にて天王町穀屋にて昼飯支度、夫れより出で、星谷
・台・畑原より雪沢山、芝・原共道明き申さず、道中壱番大難儀致し、漸
く暮六つ時頃目出度く帰村いたし候事、正月十四日暮六つ時帰村
覚
同十五日昼より目出度く日待ち致す、講仲ヶ間一同寄り、心ばかり八升拵
う、御神酒代例の通り拾弐文集め、右小麦粉の分に庄兵衛方より弐升菊五
郎持参参り、七つ時片□致す所、一同帰り候事、亥正月十五日
差し上げ申す一札の事
一、柳沢八郎右衛門知行所百姓何人、右のもの共此度遠州秋葉寺え参詣
の者に相違御座無く候間、御関所御通せ遊ばさせられ下さるべく候、之れ
に依り通り手形差し出し奉り候処、件の如し
武州多摩郡下小山田村
天保十亥年正月二日 名主
何右衛門
相州箱根
御関所
御役人中様