秋葉道中日記ノ控

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「 天保十亥年正月
     秋葉道中日記ノ控
        下小山田村
           若林氏」
   目出度初り
 亥正月二日秋葉寺江出立
 同日雲(曇)リ昼ヨリ小雨少々降リ出し
 星谷勘(観)音堂前迄要助馬ニ乗リ
一廿八文       星谷茶代厚木
           渡し場はし銭
一四拾八文      厚木釜成屋
              昼飯料
 同日早七ツ時大磯宿ヘ着
   二日晩泊リ大磯宿右(左)リ側
        山本屋甚右衛門
一弐百廿四文   同旅籠代
一廿四文     同所茶代割
   三日小雨降リ
 大磯宿より出立夫ヨリ不休湯本迄
 五里行同日昼飯湯本ニ而支度
一四拾八文   湯本昼飯代
一拾六文    わらんじ代
 夫ヨリ壱里行畑宿ニ而小休致
一六拾文    畑宿雑煮代
 是より山坂難所之道也七ツ時頃
 御関所ヲ通リ
   三日晩泊リ箱根宿右(左)リ側
        はふや四郎右衛門
一弐百四拾八文   同所はたご
一四拾九文       茶代割合
一三十弐文       途中茶料
   四日雪降リ
 箱根より三島ヘ加(駕)籠ニ三朱ニ而乗リ
 雪雨まじり降リ誠道悪敷夫ヨリ
 途中より不快ニ而沼津迄又六百文ニ而
 乗リ九ツ半時頃沼津ヘ着
   同日泊リ沼津町右(左)リ側
        元問屋
一三百文     はたご
一三十弐文    吉原昼飯
一三十弐文    わらんじ弐足
   五日沼津より出立
一三十弐文    元市場
          白酒
      サツタ峠
一四拾八文    あわび焼
一三十六文    富士川船賃
 五日朝沼津より出立吉原ニ而
 昼飯支度元市場富士の
 白酒小休致同日沖(興)津宿ヘ
 暮方ニ着
   五日晩泊リ沖(興)津宿右(左)リ側
        ミのぶ屋
 同日
一弐百四拾八文  はたご
   六日雨降リ
 朝沖(興)津宿より出立夫ヨリ
 府中町迄不休行御城下
 通リ仕舞阿部(安倍)川手前ニ而
 餅名物ニ而小休致此所
 川越問屋ニ而賃銭壱人前
 四拾五文づゝ出し川こし致
 夫ヨリ丸子宿ニ而名物とろゝ汁
 くい夫ヨリ宇津の谷峠十団子
 より下リテ岡部宿ヘ出ル
六日
一十、五拾文   阿部(安倍)川餅
一六拾四文    丸子とろゝ汁
一廿四文     くし柿
一四拾八文    わらじ
一廿八文     藤枝月代
   六日晩泊リ
    藤枝宿左リ側
      紀伊国屋源兵衛
一弐百廿四文   はたご
   七日
 藤枝宿より出立宿外レ直ニ
  瀬戸川拾六文越し賃外ニ
 八文心つき遣ス夫ヨリ島田宿也
 大井川越賃定リ此節水増ニ付
 九拾弐文之掛札有之壱人前
 三百文払ひ四人ニ而連台ニ而
 越し上リテ百文四人江祝儀遣ス
 是ヨリカナヤ宿也峠壱ツ越し又
 壱ツ登リテ小夜の中山あめの餅
 峠也是より下リテ日坂宿也
 日坂宿ニ而
一四拾八文    昼飯
一拾六文     あめ壱本
一拾文      同餅
一四拾文     ミかん草(菓)子
 夫ヨリ掛川宿外レより
 秋葉山御鳥居より入此所より
 五十丁道三里行
   七日晩泊リ
     森町右(左)リ側
      いづミや
一弐百四拾八文  はたご代
   八日晴天ニ成ル
 森町より出立途中より戌亥(犬居)迄
 百四拾八文ニ而馬ニ乗リ同所ニ而
 昼飯支度致八ツ半頃麓町ヘ
 着夫ヨリ御山ヘ登山致し
 茶漬酒肴沢山出ル茶料と
 して四人ニ而弐百文出し
   同日泊リ麓町右(左)り側
      高木屋安兵衛
一三百文     はたご
弐百七十弐文
        森町
一三百七拾弐文  足袋壱足
一百文      途中草(菓)子品々
一四拾八文    麓ニ而あんま
   九日晴天
 麓より出立夫ヨリ三倉ニ而
 小休致し直ニ出立森町にて
     森町
一七十弐文    昼飯料
 森町より掛川宿まで
 五十丁道三里仕立加(駕)籠ニ
 乗リ壱朱ト五拾文賃銭也
 外ニ四拾八文酒代遣ス
   九日晩泊リ
      掛川宿
         ねじがね屋
一弐百四拾八文  はたご
   十日晴天
 掛川宿より出立夫ヨリ日坂より
 金谷宿迄峠弐ツ有リ此所
 弐百文ニ而加(駕)籠ニ乗リ夫ヨリ
 大井川賃弐百七拾八文にて
 越し島田宿ニ而昼飯此所より
 藤枝迄弐百文ニ而加(駕)籠ニ乗リ
 藤枝より岡部迄百七拾弐文ニ而
 加(駕)籠ニ乗リ同日泊リハ
      丸子宿右(左)リ側
         桑名屋善兵衛
一弐百四拾八文  はたご
   十一日雨降リ
 丸子宿より出立阿部(安倍)川
 四拾五文ニ而早朝ニ越し夫ヨリ
 府中宿ヘ出此所より段々
 雨大降リに成江尻宿へ出る
 沖(興)津清見寺前茶やにて
 七拾弐文ニ而昼飯支度
 此所より雪雨まじり
 大降リ夫ヨリさつた峠ヘ掛リ
 八ツ半時頃由井(比)宿ヘ着
   同日泊リ
     由井(比)宿右(左)り側
         うんどん屋
 此内当宿壱番ノ能宿也
一弐百四拾八文  はたご
   十二日晴天
 由井(比)宿より出立夫ヨリ岩渕
 栗の粉名物ニ而小休いたし
 藤(富士)川廿四文船賃払渡リ
 元市場白酒ニ而小休致し
 夫ヨリヨシ原宿より原宿迄
 百廿四文ニ而馬ニ乗リ原宿ニ而
 昼飯支度夫ヨリ沼津
 御城下町ヲ通リ同日
 七ツ時頃三島宿ヘ着致
   十二日晩泊リ
    三島明神前右(左)り側
       松葉や
一弐百四拾八文  はたご
 藤枝より岡部迄百七拾弐文ニ而
 加(駕)籠ニ乗リ同日泊リハ
       丸子宿右(左)リ側
         桑名屋善兵衛
一弐百四拾八文  はたご
   十一日雨降リ
 丸子宿より出立阿部(安倍)川
 四拾五文ニ而早朝ニ越し夫ヨリ
 府中宿ヘ出此所より段々
 雨大降リに成江尻宿へ出る
 沖(興)津清見寺前茶やにて
 七拾弐文ニ而昼飯支度
 此所より雪雨まじり
 大降リ夫ヨリさつた峠ヘ掛リ
 八ツ半時頃由井(比)宿ヘ着
   同日泊リ
      由井(比)宿右(左)り側
        うんどん屋
 此内当宿壱番ノ能宿也
一弐百四拾八文  はたご
   十二日晴天
 由井(比)宿より出立夫ヨリ岩渕
 栗の粉名物ニ而小休いたし
 藤(富士)川廿四文船賃払渡リ
 元市場白酒ニ而小休致し
 夫ヨリヨシ原宿より原宿迄
 百廿四文ニ而馬ニ乗リ原宿ニ而
 昼飯支度夫ヨリ沼津
 御城下町ヲ通リ同日
 七ツ時頃三島宿ヘ着致
   十二日晩泊リ
    三島明神前右(左)り側
       松葉や
一弐百四拾八文  はたご
 右之もの共此度遠州秋葉寺江
 参詣之者ニ相違無御座候間
 御関所御通セ被為遊可被下候依之
 通リ手形奉差出候処如件
      武州多摩郡下小山田村
  天保十亥年正月二日  名主
              何右衛門
 相州箱根
 御関所
  御役人中様
 


 
【読み下し文】

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 (じゅう)亥年(いどし)正月(しょうがつ)
秋葉(あきば)道中(どうちゅう)日記(にっき)(ひかえ)
   下小山田(しもおやまだ)(むら)若林(わかばやし)()
 
   目出度(めでた)(はじ)まり
()正月(しょうがつ)二日(ふつか)秋葉(しゅうよう)()出立(しゅったつ)同日(どうじつ)(くも)り、(ひる)より小雨(こさめ)少々(しょうしょう)()()し、星谷(ほしのや)(かん)
音堂(のんどう)前迄(まえまで)要助(ようすけ)(うま)()
(ひとつ)廿八文(にじゅうはちもん) 星谷(ほしのや)茶代(ちゃだい)厚木(あつぎ)(わた)()はし(せん)
(ひとつ)四拾(よんじゅう)八文(はちもん) 厚木(あつぎ)釜成(かまなり)()昼飯(ひるめし)(りょう)
同日(どうじつ)(はや)(なな)(どき)大磯(おおいそ)宿(じゅく)()く、
二日(ふつか)(ばん)(とま)り、大磯(おおいそ)宿(じゅく)(ひだ)(がわ)山本(やまもと)()甚右衛門(じんえもん)
(ひとつ)弐百(にひゃく)廿(にじゅう)四文(よんもん) (どう)旅籠(はたご)(だい)
(ひとつ)廿(にじゅう)四文(よんもん) 同所(どうしょ)茶代(ちゃだい)()
   三日(みっか)小雨(こさめ)()
大磯(おおいそ)宿(じゅく)より出立(しゅったつ)()れより(やす)まず湯本(ゆもと)(まで)五里(ごり)()く、同日(どうじつ)昼飯(ひるめし)湯本(ゆもと)にて支度(したく)
(ひとつ)四拾(よんじゅう)八文(はちもん) 湯本(ゆもと)昼飯(ひるめし)
(だい)(ひとつ)(じゅう)六文(ろくもん) わらんじ(だい)
()れより壱里(いちり)()く、畑宿(はたじゅく)にて小休(しょうきゅう)(いた)
(ひとつ)六拾文(ろくじゅうもん) 畑宿(はたじゅく)雑煮(ぞうに)(だい)
(これ)より山坂(やまさか)難所(なんしょ)(みち)なり、(なな)(どき)(ごろ)(おん)関所(せきしょ)(とお)り、三日(みっか)(ばん)(とま)り、箱根(はこね)宿(じゅく)(ひだ)(がわ)
はふや四郎右衛門(しろうえもん)
(ひとつ)弐百(にひやく)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) 同所(どうしよ)はたご
(ひとつ)四拾(よんじゆう)九文(きゆうもん) 茶代(ちやだい)割合(わりあい)
(ひとつ)三十(さんじゆう)弐文(にもん) 途中(とちゆう)茶料(ちやりよう)
   四日(よつか)(ゆき)()
箱根(はこね)より三島(みしま)駕籠(かご)三朱(さんしゆ)にて()り、雪雨(ゆきあめ)まじり()り、(まこと)(みち)()()く、()れよ
途中(とちゆう)より不快(ふかい)にて沼津(ぬまづ)(まで)(また)六百(ろつぴやく)(もん)にて()り、(ここの)半時(はんどき)(ごろ)沼津(ぬまづ)()く、(どう)
(じつ)(とま)り、沼津(ぬまづ)(まち)(ひだ)(がわ)元問屋(もとどんや)
(ひとつ)三百文(さんびやくもん) はたご
(ひとつ)三十(さんじゆう)弐文(にもん) 吉原(よしわら)昼飯(ひるめし)
(ひとつ)三十(さんじゆう)弐文(にもん) わらんじ八足(はつそく)
 五日(いつか)沼津(ぬまづ)より出立(しゆつたつ)
(ひとつ)三十弐(さんじゆうに)(もん) (もと)市場(いちば) 白酒(しろざけ)
(ひとつ)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) さった(とうげ) あわび()
(ひとつ)三十(さんじゆう)六文(ろくもん) 富士川(ふじかわ)船賃(ふなちん)
  五日(いつか)(あさ)沼津(ぬまづ)より出立(しゆつたつ)吉原(よしわら)にて昼飯(ひるめし)支度(したく)(もと)市場(いちば)富士(ふじ)白酒(しろざけ)小休(しようきゆう)(いた)す、
同日(どうじつ)興津(おきつ)宿(じゆく)暮方(くれがた)()く、五日(いつか)(ばん)(とま)興津(おきつ)宿(じゆく)(ひだ)(がわ)みのぶ()
同日(どうじつ)
(ひとつ)弐百(にひやく)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) はたご
   六日(むいか)(あめ)()
(あさ)興津(おきつ)宿(じゆく)より出立(しゆつたつ)()れより府中(ふちゆう)(まち)(まで)(やす)まず()く、()城下(じようか)(とお)仕舞(しまい)
安倍川(あべかわ)手前(てまえ)にて(もち)名物(めいぶつ)にて小休(しようきゆう)(いた)す、()(ところ)川越(かわこ)問屋(どんや)にて賃銭(ちんせん)壱人前(いちにんまえ)(よん)
(じゆう)五文(ごもん)づつ()(かわ)こし(いた)す、()れより丸子(まりこ)宿(じゆく)にて名物(めいぶつ)とろろ(じる)くい、()
より宇津谷(うつや)(とうげ)十団子(とおだんご)より(くだ)りて岡部(おかべ)宿(じゆく)()
六日(むいか)
(ひとつ)(じゅう)五拾文(ごじゆうもん) 安倍川餅(あべかわもち)
(ひとつ)六拾(ろくじゆう)四文(よんもん) 丸子(まりこ)とろろ(じる)
(ひとつ)廿(にじゆう)四文(よんもん) くし(がき)
(ひとつ)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) わらじ
(ひとつ)廿(にじゆう)八文(はちもん) 藤枝(ふじえだ)月代(さかやき)
六日(むいか)(ばん)(とま)り、
藤枝(ふじえだ)宿(じゆく)(ひだ)(がわ) 紀伊国屋(きのくにや)源兵衛(げんべえ)
(ひとつ)弐百(にひやく)廿(にじゆう)四文(よんもん) はたご
   七日(なのか)
藤枝(ふじえだ)宿(じゆく)より出立(しゆつたつ)宿(しゆく)(はず)(ただ)ちに瀬戸川(せとがわ)拾六(じゆうろく)(もん)()(ちん)(ほか)八文(はちもん)(こころ)づき(つかわ)
す、()れより島田(しまだ)宿(じゆく)なり、大井川(おおいがわ)()(ちん)(さだま)り、()(せつ)水増(みずま)しに()九拾(きゆうじゆう)弐文(にもん)
()(ふだ)()()り、壱人前(いちにんまえ)三百(さんびやく)(もん)(はら)ひ、四人(よにん)にて連台(れんだい)にて()し、(あが)りて(ひやく)
(もん)四人(よにん)祝儀(しゆうぎ)(つかわ)す、(これ)よりかなや宿(じゆく)なり、(とうげ)(ひと)()又壱(またひと)(のぼ)りて小夜(さよ)
中山(なかやま)あめの餅峠(もちとうげ)なり、(これ)より(くだ)りて日坂(につさか)宿(じゆく)なり
日坂(につさか)宿(じゆく)にて
(ひとつ)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) 昼飯(ひるめし)
(ひとつ)拾六(じゆうろく)(もん) あめ壱本(いつぽん)
(ひとつ)拾文(じゆうもん) 同餅(どうもち)
(ひとつ)四拾(よんじゆう)(もん) みかん菓子(がし)
()れより掛川(かけがわ)宿(しゆく)(はず)れより秋葉(あきば)(さん)(おん)鳥居(とりい)より()る、()(ところ)より五十町(ごじゆつちよう)(みち)(さん)
()()く、七日(なのか)(ばん)(とま)り、森町(もりまち)(ひだ)(がわ)いづみや
(ひとつ)弐百(にひやく)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) はたご(だい)
   八日(ようか)晴天(せいてん)()
森町(もりまち)より出立(しゆつたつ)途中(とちゆう)より犬居(いぬい)(まで)百四拾(ひやくよんじゆう)八文(はちもん)にて(うま)()り、同所(どうしよ)にて昼飯(ひるめし)
支度(したく)(いた)し、()(はん)(ごろ)(ふもと)(まち)()く、()れより御山(おやま)登山(とざん)(いた)し、茶漬(ちやづけ)(さけ)(さかな)
沢山(たくさん)()る、茶料(ちやりよう)として四人(よにん)にて弐百(にひやく)(もん)()し、同日(どうじつ)(とま)り、(ふもと)(まち)(ひだ)(がわ)高木屋(たかぎや)
安兵衛(やすべえ)
(ひとつ)三百文(さんびやくもん) はたご
  弐百(にひやく)七十(ななじゆう)弐文(にもん)
(ひとつ)三百(さんびやく)七拾(ななじゆう)弐文(にもん) 森町(もりまち)足袋(たび)壱足(いつそく)
(ひとつ)百文(ひやくもん) 途中(とちゆう)菓子(かし)品々(しなじな)
(ひとつ)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) (ふもと)にてあんま
   九日(ここのか)晴天(せいてん)
(ふもと)より出立(しゆつたつ)()れより三倉(みくら)にて小休(しようきゆう)(いた)(ただ)ちに出立(しゆつつ)森町(もりまち)にて
(ひとつ)七十(ななじゆう)弐文(にもん) 森町(もりまち)昼飯(ひるめし)(りよう)
森町(もりまち)より掛川(かけがわ)宿(じゆく)まで五十町(ごじゆつちよう)(みち)三里(さんり)仕立(した)駕籠(かご)()壱朱(いつしゆ)五拾(ごじゆう)(もん)賃銭(ちんせん)
なり、(ほか)四拾(よんじゆう)八文(はちもん)酒代(さかしろ)(つかわ)す、九日(ここのか)(ばん)(とま)り、掛川(かけがわ)宿(じゆく)ねじがね()
(ひとつ)弐百(にひやく)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) はたご
   十日(とおか)晴天(せいてん)
掛川(かけがわ)宿(じゆく)より出立(しゆつたつ)()れより日坂(につさか)より金谷(かなや)宿(じゆく)(まで)(とうげ)(ふた)()り、()(ところ)弐百(にひやく)(もん)
にて駕籠(かご)()り、()れより大井川(おおいがわ)(ちん)弐百(にひやく)七拾(ななじゆう)八文(はちもん)にて()し、島田(しまだ)宿(じゆく)にて(ひる)
(めし)()(ところ)より藤枝(ふじえだ)(まで)弐百(にひやく)(もん)にて駕籠(かご)()り、藤枝(ふじえだ)より岡部(おかべ)(まで)百七拾(ひやくななじゆう)弐文(にもん)
にて駕籠(かご)()り、同日(どうじつ)(とま)りは丸子(まりこ)宿(じゆく)(ひだ)(がわ) 桑名屋(くわなや)善兵衛(ぜんべえ)
(ひとつ)弐百(にひやく)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) はたご
   十一(じゆういち)(にち)(あめ)()
丸子(まりこ)宿(じゆく)より出立(しゆつたつ)安倍川(あべかわ)四拾(よんじゆう)五文(ごもん)にて早朝(そうちよう)()し、()れより府中(ふちゆう)宿(じゆく)()
づ、()(ところ)より段々(だんだん)(あめ)大降(おおぶ)りに()る、江尻(えじり)宿(じゆく)()る、興津(おきつ)清見寺(せいけんじ)(まえ)(ちや)やに
七拾(ななじゆう)弐文(にもん)にて昼飯(ひるめし)支度(したく)()(ところ)より雪雨(ゆきあめ)まじり大降(おおぶ)り、()れよりさった(とうげ)
(かか)り、()半時(はんどき)(ごろ)由比(ゆい)宿(じゆく)()く、同日(どうじつ)(とま)り、由比(ゆい)宿(じゆく)(ひだ)(がわ) うんどん()
()(かど)当宿(とうしゆく)壱番(いちばん)()宿(しゆく)なり
(ひとつ)弐百(にひやく)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) はたご
   十二(じゆうに)(にち)晴天(せいてん)
由比(ゆい)宿(じゆく)より出立(しゆつたつ)()れより岩渕(いわぶち)(くり)()名物(めいぶつ)にて小休(しようきゆう)いたし、藤川(ふじかわ)廿(にじゆう)(よん)
(もん)船賃(ふなちん)(はら)(わた)り、(もと)市場(いちば)白酒(しろざけ)にて小休(しようきゆう)(いた)し、()れよりよし原宿(わらじゆく)より原宿(はらじゆく)
(まで)百廿(ひやくにじゆう)四文(よんもん)にて(うま)()り、原宿(はらじゆく)にて昼飯(ひるめし)支度(したく)()れより沼津(ぬまづ)()城下町(じようかまち)(とお)
り、同日(どうじつ)(なな)(どき)(ごろ)三島(みしま)宿(じゆく)(ちやく)(いた)す、十二(じゆうに)(にち)(ばん)(とま)り、三島(みしま)明神(みようじん)(まえ)(ひだ)(がわ)松葉(まつば)

(ひとつ)弐百(にひやく)四拾(よんじゆう)八文(はちもん) はたご
   十三(じゆうさん)(にち)(くも)
三島(みしま)宿(じゆく)より()()ちて山田(やまだ)茶屋(ちやや)にて小休(しようきゆう)(いた)す、()(ところ)より箱根(はこね)宿(じゆく)(まで)()
(ひやく)(もん)にて駕籠(かご)()り、四拾(よんじゆう)八文(はちもん)酒代(さかだい)(つかわ)す、箱根(はこね)宿(じゆく)はふやにて小休(しようきゆう)()
れより畑宿(はたじゆく)にて(やす)む、小田原町(おだわらまち)()少々(しようしよう)()ぎに()く、()れより大磯(おおいそ)宿(じゆく)
(まで)(きん)弐朱(にしゆ)にて駕籠(かご)()り、(くれ)()(どき)大磯(おおいそ)宿(じゆく)()く、十三(じゆうさん)(にち)(とま)り、大磯(おおいそ)宿(じゆく)(やま)
本屋(もとや)甚右衛門(じんえもん)
(ひとつ)百廿(ひやくにじゆう)四文(よんもん) はたご(だい)
   十四日(じゆうよつか)天晴(てんは)
大磯(おおいそ)宿(じゆく)より出立(しゆつたつ)厚木(あつぎ)宿(じゆく)にて天王(てんのう)(ちよう)穀屋(こくや)にて昼飯(ひるめし)支度(したく)()れより()で、星谷(ほしのや)
(だい)畑原(はたはら)より(ゆき)沢山(たくさん)(しば)(はら)(とも)道明(みちあ)(もう)さず、道中(どうちゆう)壱番(いちばん)大難儀(だいなんぎ)(いた)し、(ようや)
(くれ)()(どき)(ごろ)目出度(めでた)帰村(きそん)いたし(そうろう)(こと)正月(しようがつ)十四日(じゆうよつか)(くれ)()(どき)帰村(きそん)

   (おぼえ)
(どう)十五(じゆうご)(にち)(ひる)より目出度(めでた)日待(ひま)(いた)す、(こう)仲ヶ間(なかま)一同(いちどう)()り、(こころ)ばかり八升(はつしよう)(こしら)
う、御神酒(おみき)代例(だいれい)(とお)拾弐(じゆうに)(もん)(あつ)め、(みぎ)小麦粉(こむぎこ)(ぶん)庄兵衛(しようべえ)(がた)より弐升(にしよう)菊五(きくご)
(ろう)持参(じさん)(まい)り、(なな)(どき)(かた)(いた)(ところ)一同(いちどう)(かえ)(そうろう)(こと)亥正月(いしようがつ)十五(じゆうご)(にち)

   ()()(もう)一札(いつさつ)(こと)
(ひとつ)柳沢(やなぎさわ)八郎右衛門(はちろうえもん)知行所(ちぎようしよ)百姓(ひやくしよう)何人(なんにん)(みぎ)のもの(ども)此度(こたび)遠州(えんしゆう)秋葉(しゆうよう)()参詣(さんけい)
(もの)相違(そうい)御座(ござ)()(そうろう)(あいだ)御関所(おんせきしよ)御通(おとお)(あそ)ばさせられ(くだ)さるべく(そうろう)()
()(とお)手形(てがた)()()(たてまつ)(そうろう)(ところ)(くだん)(ごと)
      武州多摩郡下小山田村
  天保十亥年正月二日  名主
              何右衛門
 相州箱根
 御関所
  御役人中様