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「横浜市青木町廣台一、〇五七（封筒表面）
　　村野常右衛門殿」
「利光鶴松」（封筒裏面）
拝啓陳者益御清栄
奉賀候先般来小田原
急行開業に関し多忙
を極め意外之御疎遠
奉謝候然るに同電車も
愈々四月一日より開通致
し候処開業之当日より
三日の神武天皇祭迄ハ
遅延勝にて乗客に対し
実に気之毒之思ひを致し
申候尤も新宿登戸間
は当初より予定之通り
運転出来申候昨四日
よりは全線総て予定通
り運転を実行致し
申候大体に於て最早
安心と奉存候
当初より最善之注意
ハ払ひ居る次第に候得共
延着等之事故を生
せし者遺憾之至りにて
小生も只管恐縮致し
居り申候重傷其他
生命に関する不祥
事を発生せさりしは
天佑と奉存候
兎に角開業之初めに
方り重役諸氏にも御心
配相掛け候儀重々
恐縮に御座候何れ
　

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拝啓(はいけい)、陳(の)ぶれば益御(ますます)清栄(ごせいえい)賀(が)し奉(たてまつ)り候(そうろう)。先般来(せんぱんらい)小田原(おだわら)急行(きゆうこう)開業(かいぎよう)に関(かん)し多忙(たぼう)
を極(きわ)め、意外(いがい)の御疎遠(ごそえん)謝(しや)し奉(たてまつ)り候(そうろう)。然(しか)るに同電車(どうでんしや)も愈々(いよいよ)四月一日(しがつついたち)より開通(かいつう)致(いた)
し候(そうろう)処(ところ)、開業(かいぎよう)の当日(とうじつ)より三日(みつか)の神武天皇祭(じんむてんのうさい)迄(まで)は遅延(ちえん)勝(が)ちにて、乗客(じようきやく)に対(たい)
し実(じつ)に気(き)の毒(どく)の思(おも)ひを致(いた)し申(もう)し候(そうろう)。尤(もつと)も新宿(しんじゆく)・登戸(のぼりと)間(かん)は当初(とうしよ)より予定(よてい)の通(とお)
り運転(うんてん)出来(でき)申(もう)し候(そうろう)。昨(さく)四日(よつか)よりは全線(ぜんせん)総(すべ)て予定(よてい)通(どお)り運転(うんてん)を実行(じつこう)致(いた)し申(もう)し候(そうろう)。
大体(だいたい)に於(おい)て最早(もはや)安心(あんしん)と存(ぞん)じ奉(たてまつ)り候(そうろう)。当初(とうしよ)より最善(さいぜん)の注意(ちゆうい)は払(はら)ひ居(お)る次第(しだい)に
候(そうら)得(え)共(ども)、延着(えんちやく)等(など)の事故(じこ)を生(しよう)ぜしは遺憾(いかん)の至(いた)りにて、小生(しようせい)も只管(ひたすら)恐縮(きようしゆく)致(いた)
し居(お)り申(もう)し候(そうろう)。重傷(じゆうしよう)其(そ)の他(ほか)生命(せいめい)に関(かん)する不祥事(ふしようじ)を発生(はつせい)せざりしは天佑(てんゆう)と
存(ぞん)じ奉(たてまつ)り候(そうろう)。兎(と)に角(かく)開業(かいぎよう)の初(はじ)めに方(あた)り重役(じゆうやく)諸氏(しよし)にも御心配(ごしんぱい)相掛(あいか)け候(そうろう)儀(ぎ)、
重(かさ)ね重(がさ)ね恐縮(きようしゆく)に御座(ござ)候(そうろう)。何(いず)れ近々(ちかぢか)御集会(ごしゆうかい)相願(あいねが)ひ詳細(しようさい)御報告(ごほうこく)申(もう)し上(あ)ぐべ
き心組(こころぐみ)には候(そうら)え共(ども)、取(と)り敢(あ)えず大略書中(たいりやくしよちゆう)を以(もつ)て貴意(きい)を得(え)候(そうろう)。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬具(けいぐ)
　　四月五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　利光鶴松
　　村野常右衛門殿