旅と信仰

 江戸時代、旅は厳しい身分秩序や社会的規制のなかで生きる庶民にとって日常からの解放でしたが、時間や費用もかかるため、誰もが気軽にできるわけではありませんでした。
 しかし江戸時代後期、信仰の一環として許されていた寺社参詣の旅が、庶民の間でブームとなります。その背景として、全国の交通網や宿泊施設の整備、貨幣経済の発達による経済的な成長、「名所記」や「道中記」、地図などのガイドブックの刊行が挙げられます。

史料
木曽道中記木曽道中記木曽路の宿場間の距離や駄賃などが記載されている旅行案内です。江戸時代後期、庶民の旅行が盛んになると、こうした道中記の刊行も増加しました。
秋葉道中日記ノ控秋葉道中日記ノ控火防(ひぶせ)の神を祀る秋葉山へ参詣する際、宿泊料・食事代など旅行中に使った費用を記録しました。旅の費用は皆で出し合い、代表者が参詣したため、費用の使い道を明らかにしておく必要がありました。