石英の王様 真砂の六方石

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 私は、真砂中学校の庭に立つと、ふるさとに帰ってきたなあという気持ちになります。真砂中学校の庭にどっかりとすわるように置かれている石-それは巨大な石英の結晶(六方石)(※結晶が六角柱の形をしているところから、こう呼ばれている)です。この石英は周囲約二・二メートルで、現存する結晶の中でも世界最大級の大きさです。まるで、生徒たちをじっと見守ってくれているかのようです。
 
真砂中学校の六方石
 
 中学生のころは、この石の大きさと宝石のような形が好きで、わざわざ見にいったり、なでたりした思い出があります。しかし、この石がそんなにすごいものだということは全く知りませんでした。
 あれから二十数年がたち、真砂小学校の子どもたちと一緒に、この石のことを調べることになり、馬谷鉱山の柴田久男さんにお話を聞くことになりました。柴田さんは、子どもたちを車に乗せ、この石がとられた馬谷鉱山の採掘現場に連れて行き、そこでお話をしてくれました。
 馬谷鉱山は、日本最大級のペグマタイト(※粒の粗い大きな結晶を示す岩のこと)鉱床で、掘り出された鉱石は陶磁器の材料として、全国の企業に出荷されているそうです。また、採掘された六方石で大きな形のものは日本各地に寄贈され、京都大学、筑波大学や九州大学、愛媛大学などいろいろな大学や全国各地で開催される結晶展などで展示されているということでした。しかし、今は発破(※爆薬をしかけて、岩石などを爆破すること)によって、石英を産出しているので大きな結晶も破壊された状態で産出されることが多く、真砂にあるような大きな結晶は、今後は見つからないだろうということでした。
 
 子どもたちは、このお話を目を輝かせながら聞いていました。子どもたちは、馬谷鉱山の採掘現場から見た広大な景色と世界最大級の石英の結晶のことを決して忘れることはないでしょう。
 何も語ることのない一つの石-それが「ふるさとの宝」であることを知った私は、うれしい気持ちでいっぱいになりました。今も時々、この石に会いに真砂に出かけています。 
☆もっと調べてみたい人は、『新装 島根の自然は生きている』(島根県小・中学校理科教育研究会編)や『ふるさと真砂史』(岡本廉造著)などを読んでみましょう。