益田川と高津川に挟まれた下流の町、中須町。町には、海岸沿いに松林が広がっています。その本数は二万本。これは、地元の中須自治会の皆さんを中心に、多くの人が関わって復活させた松林です。この作業は十年以上かかり、それは苦労の連続でした。
【松林が地域を守っている】
中須町のような海岸に近い場所は、海からの風を非常に強く受けます。そして、その風に乗って、砂などが一緒に飛んできます。この風や砂によって、家や畑に大きな被害が出てしまうのです。しかし、この広い松林が、それを食い止めてくれます。このような林のことを防風林と呼びます。
【四百年の歴史が枯れていく】
中須の海岸に、最初に防風林が植えられたのは、約四百年前と言われています。私たちの先祖が、将来の地域の安全を願って植えてくれたのです。当時は、きっと大変な作業であったに違いありません。
しかし、近年、その松林が枯れていく「松枯れ」が起こり始めました。その原因は松くい虫です。このままでは大切な松林が無くなってしまうと地区の人たちは不安になりました。
【仲間と一緒に松林を守ろう】
一九九七(平成九年)年、枯れていく姿を悲しく思った地区の人たちは、松林を守ろうと決意しました。誰かに「やりなさい」と言われたわけではありません。町を守るために自ら立ち上がったのです。
さっそく松林の掃除や、下草刈りから始めました。松の一本、一本に至るまで丁寧に世話をしました。また、松くい虫にも強い松も少しずつ植えていきました。
最初は少なかった仲間でしたが、何年も活動を続けていくうちに、だんだんとこの活動を手伝ってくれる人が増えてきました。今では、二百五十名以上の地区の人や、ボランティアの人と一緒に松林を守る作業をしています。このように、中須の海岸には、多くの人に支えられた松林がしっかりと根をはっています。あの広い松林には多くの人の心がこもっているのです。