【一等三角点の山】
豊川地区には益田市で唯一、山頂に一等三角点をもつ韮草山(五四三m)という山があります。三角点というのは、地形を正確に測量するための大切な目印のことです。こうした三角点は全国に何万点もありますが、一等三角点は全国で約千点しかありません。その一つが、韮草山にあるのです。正確な場所を示す三角点は、地震や火山噴火を予知するために利用され、大規模な災害を未然に防ぐ役目を果たしています。
【三角点を守る】
三角点がつくられたのは、明治時代のころです。当時は、国土地理院の人が三角点のある場所まで行って測量していました。そのため、三角点の周りの木を切ったり、三角点までの道を整備したりしなければなりませんでした。地区の人々は、昔からこの作業に協力してきたのです。年に数回は韮草山に登り、ボランティアで約二キロメートルの山道を整えてきました。
現在は、宇宙から人工衛星を使って三角点を観測しているので、地上で測量する必要はなくなりました。しかし、豊川地区では今でも多くの人が年に一回は山に登り、三角点周辺や登山道の整備ををして、一等三角点を大切に守っています。
【日本の目印 韮草山】
韮草山の登山口には大元神社があり、そこには「岩栃のしだれザクラ」(樹齢約百二十年)が勇壮な姿を見せています。春になると垂れ下がった枝が大きく張り出して、美しい花をつけ、見る人の心を和ませます。そこから、山頂までは緩やかに山道が続き、さわやかな森の風が吹き抜けます。山頂からは遠く日本海を一望でき、まさに「日本の目印」にふさわしい眺望が開けています。
「もっと、益田の人に韮草山のすばらしさを味わってほしいのです。」
豊川の人たちはこう言って、韮草山のすばらしさを伝えるために、今年もみんなで作業を続けています。
岩栃のしだれ桜(フォトクラブ高津川21提供)