【棚田の里 中垣内】
中西地区は、打歌山(大道山)に抱かれ、裾野を清流白上川が流れる美しい風景が見られる地区です。とくに、中垣内の棚田の風景は格別です。棚田とは、山の斜面にたくさんの田が何段かの棚のように作られている田のことです。
中垣内の棚田は、その美しさから一九九九(平成十一)年、『日本の棚田百選』に選ばれました。地区の人たちは、美しい風景を守るために、草を刈ったり、道を整備したりしています。地区の人たちにとって、棚田はふるさとの誇りなのです。
中垣内の棚田
【全国的にも珍しい「回り舞台」】
美しい棚田のそばにある白岩神社の境内に、百年前に作られた「回り舞台」があります。回り舞台とは、舞台の中央にある直径四・九メートルの回転する舞台のことです。回り舞台の床下には木製のハンドルがあり、それを床下から数人の人力で回すことができるようになっています。こうした人力で動かす回り舞台は、全国でも珍しいものです。
もともと、この地域は芝居が盛んなところでした。戦前まで地区の若者が定期的に芝居を上演していましたが、その後しばらくの間、途絶えていました。しかし、地区の人の熱い思いに支えられて復活し、今では二年に一度、お盆のころに新作の芝居が上演されています。二〇一〇(平成二十二)年の舞台では、四百人を超える観客が集まり、夜遅くまでにぎわいました。
【人々をつなぐ「回り舞台」】
芝居は、地区の人の手作りです。脚本を書く人、芝居をする人、舞台を動かす人、衣装を縫う人など、すべて地区の人たちで行っています。
「ここで芝居をすることは、年齢や性別を超えたつながりをつくることです。これからも、棚田と回り舞台をふるさとの宝として守っていきたいと思います。」
長らく舞台づくりに携わってきた方が話された言葉です。美しい山間のこの地区には、温かい人のつながりが今でも息づいています。