【江戸時代の家 美濃地屋敷】
広島県との県境に近い匹見町道川地区には、「旧割元庄屋 美濃地屋敷」があります。国道沿いに大きな看板もあり、見事な萱ぶき屋根が印象的な建物です。この美濃地屋敷は二〇〇五(平成十七)年に道川地区のシンボルとしてオープンしました。約百五十年前に改築された当時のままの様子を伝えていることから、県外からも多くの方がやってきます。
【大きな力を持っていた美濃地家】
この美濃地屋敷が貴重なのは、古い建物だからだけでなく、「割元庄屋」という役割をしていた家だからです。
江戸時代には、今のように市や町ではなく、たくさんの村がありました。村の人から税を集めたり、安心して暮らせるようにお世話をしたりするのが「庄屋」の役割です。この庄屋たちをとりまとめるのが「割元庄屋」であり、地域でも大きな力を持っていたことから名字をつけることができました。「美濃地」とは、ご先祖が道川に住む前に益田の美濃地に住んでいたことから、それを名字にしたようです。
【地域の思いから生まれた「美濃地邸食」】
美濃地屋敷には、たくさんの豪華な漆器(※木や紙にうるしをぬって作られた食器)が残されています。そこで、二百五十年以上前の食器で道川ならではの食事を楽しんでもらおうとして、「道川精進料理の会」のみなさんによる「美濃地邸食」が生まれました。「美濃地邸食」で使われる食材は全て道川でとれた米や野菜です。タケノコ、ウド、シイタケなど煮物はもちろん、みそ汁の豆腐も地元の加工場で作ったものを使っています。今では、広島県や山口県からも予約が入るほど人気があります。
江戸時代から残る歴史や建物、そして、地域の方の思いがいっしょになったことで「美濃地邸食」は生まれました。今では地域の高齢者の方々も材料を提供することで生きがいを感じたり、自分たちでできることをしようとする力が生まれたりしています。道川地区のように、地域に残されている歴史や文化をもう一度見つめなおすと、新しいことを生み出すきっかけになるかもしれません。そうしてまた新たな歴史ができていくのです。
美濃地屋敷