凡例

1.この復元図は、現代の地図の上に江戸時代の壬生町の姿を投影し、失われた過去の城下町の景観を明らかにするとともに、現代と江戸時代とを対比させることによって、町の景観の変化の様子を描きだすことを大きな目的としている。
 
2.この復元図の内容は、慶応4年(1868)の壬生城と城下町の姿を想定しているが、一部に時代の前後する所もあることを、あらかじめお断わりしておきたい。
 
3.復元図の作成にあたっては、「壬生町地形図」(発行:壬生町.縮尺=1/2,500)のうち、No.22・25・27(平成8年修正)の3枚をベースとして使用した。
 
4.復元図 作成の作業は、昭和63年4月から平成6年12月まで断続的に行い、その作業過程は、次のようになっている。
 
(1) 絵図の確認
 壬生城と城下町の構造・範囲等を確認するため、城と城下町の絵図の収集を行った。全体的な構造については、付属資料『壬生城下図』(精忠神社所蔵)が最も詳しく、内容的にも信憑性が高いと考えられることから、同図を復元にあたっての基本図とすることにした。
 なお、壬生城の縄張りについては、同図のほか、城の改修に際して幕府に提出した絵図の控図と見られる絵図(文化5年12月付)を得たことから、この絵図を最も参考にした。
 
(2) 遺構の分布調査
 本丸跡を中心に、各所に点在する遺構の分布を確認した。「壬生町地形図」上に土塁や濠といった段差、傾斜地、凹地等の遺構と考えられる地形を記録した。
 
(3) 地籍図の調査
 城の範囲、城下町の町並等の確認のため、地籍図による調査を試みた。江戸時代に近い図を求めた結果、公図の基になった「字切図」(切絵図)を利用して、地割からの確認を行った。その手順としては切絵図の1枚1枚をトレースした後、字ごとにつなぎ合わせて範囲を確認した。
 また同時に、字切図に記載されている「小字名」の分布等の調査も行い、地割からだけでは判断のつかない部分を明らかにすることができた。
 
(4) 遺構と地籍図の照合
 遺構や地籍図の調査で得られた成果を、「壬生町地形図」上に投影するとともに、この2点からでは明らかではない部分の確認も行った。
 
(5) 復元図の作成
 上記の成果と『壬生城下図』等とを照合し、「壬生町地形図」上に投影して復元図とした。
 
 
5.復元図の彩色については、『壬生城下図』の色分けを参考にして、あわせて土地利用の状況が読み取れるようにしている。
 
6.壬生城および城下町についての理解を深めてもらうため、解説書を付している。後記参考資料をもとに解説したものであるが、壬生城や城下町については未だ解明されていない事柄が多く、先行研究もほとんどないため、不十分な点があることをご了承願いたい。
 
7.復元図の作成および解説書の執筆は、日本城郭史学会委員 笹崎 明が行い、構成および編集は、壬生町立歴史民俗資料館 中野正人が行った。
 
8.『壬生城下図』(精忠神社蔵)の写真は栃木県立博物館より提供いただいた。