Ⅰ壬生城 その築城を探る

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1.壬生綱房画像 鹿沼市立図書館蔵

 壬生城は室町時代の後期の文明年間(1469~87)に築城され、江戸時代まで存続した城である。江戸時代の拡張以後の壬生城は、文献・城絵図あるいは現存する遺構などによって当時の姿をかいまみることができる。しかし、築城期の壬生城については、史料的制約から不明な点が多く、築城についても壬生氏初代胤業の壬生古城と二代目綱重の壬生城と混同されることが多い。本稿では、壬生城そのものを視点の中心に置いて築城期の壬生城について考えてみたい。
 
 
2.東路の津登(「鶯宿雑記の内」) 国立国会図書館蔵

 「東路の津登」は、連歌師柴屋軒宗長の紀行文であり、永正5年(1509)のものである。宗長は、壬生の第3代壬生綱房の館(壬生城)及び鹿沼のその父第2代綱重の館(鹿沼城)を訪れており、ここに16世紀初頭における下野壬生氏の存在が示されている点で極めて重要な史料である。
 
 
3.壬生家盛衰記(「寓厳斎叢書」の内) 国立公文書館蔵

 成立は寛政8年(1796)で、作者は壬生藩士牧島芸庵惟寅の著。鹿沼を本拠とした戦国期壬生家5代の事蹟を記した戦記物。
 
 
4.壬生家覚書(「寓厳斎叢書の内」) 国立公文書館蔵

壬生家盛衰記を簡略化したもの。

 
5.押原推移録  鹿沼市立図書館蔵

 成立は文政13年(1830)で、作者は鹿沼宿名主山口安良の著。上・中・下の3巻からなる。特に、上の巻壬生家系譜の論考においては4代綱雄の欠落を指摘し立証しており、「今の世に伝える所の軍記の類は文華に引かれて事実を誤れる事共多し」と、その史学的態度を示したもの。